働きがい3位の企業が力を入れた「見える化」の中身
ケンブリッジはGreat Place to Work主催「働きがいのある会社ランキング」(以下、GPTW)に参加してから5年連続で入賞しており、2020年には中規模企業部門第3位をいただきました。ケンブリッジでは毎年、GPTWの結果を受けて働きがい施策を見直していますが、今回は直近(2019年~2020年)に特に注力した「見える化」施策について、人事管掌ディレクターである榊巻に話を聞きました。
また、施策の一環として作成した『ケンブリッジを職場に選ぶ理由』(インタビュー後半に登場)は社内外から「ケンブリッジの働きがいが高い理由がよくわかる」と好評です。本文中にリンクを掲載しておりますので、ぜひ併せてお読みください。
(インタビュー 2020年5月)
#01「見える化」は押しつけるくらいでちょうど良い
赤坂のオフィスで社員と談笑する榊巻。ケンブリッジが持つ多様な対話の形を妨げないよう、社内は原則フリーアドレス。社長席もない。(2020年1月撮影)
2020年も、GPTWでケンブリッジの取り組みが評価されました。
榊巻:
毎年参加しているGPTWは、いわば「ケンブリッジの働きがいのヘルスチェック」です。従業員の率直な意見をもとに会社をもっとよくしていくための示唆を得られてありがたいですね。
昨年(10位)から今年(3位)までの間に、特に力を入れた取り組みを教えてください。
榊巻:
個人的には「見える化」かな、と思っています。
社員が120名を超え、以前のオフィスよりずっと広い赤坂に移転してきたあたりから「鈴木さん(社長)の動きが見えづらい」「意思決定の背景が見えない」といった意見をチラホラと聞くようになりました。
ケンブリッジは行動規範で「Open」を掲げており、経営陣は常に「全部Openにしてるんだから、聞きに来てね。経営会議ももちろん見てOK。ぜひ議論にも参加してください」と言っていました。にも関わらずこういう意見が出る、ということは、ひょっとしたら、Openなのは分かっているけれども率先して首を突っ込むのは億劫なのかな、だったら「見える化」したものを押しつけていくくらいでちょうど良いのではないか、と思いました。
まさに社内マーケティングですね。具体的にはどのような「見える化」施策を実施しましたか?
榊巻:
例えば「カエルバー」。
社長が社員数人とお酒を飲みながらいろんな深い話をする月例企画です。社長が何を考えているかを確認するのにこんなよい機会はありません。毎回「年次が近い社員」などの条件を設定して、まんべんなく社員が参加できるようにしています。共通項を持った社員同士のほうが話が弾みますしね。
#02社員全員で1年かけて「経営方針」を作った
新人教育プログラムの資料。経営者自身が社員に丁寧に「ケンブリッジが大事にしていること」を説明する。経営方針書の中身について議論する枠もある。
1年にわたり、毎月の全社集会で、経営方針について皆でひざを突き合わせて議論したのも、とてもよい「見える化」でした。
榊巻:
ケンブリッジは2006年に一度、ケンブリッジメンバー全員で経営方針を議論し、それを対外的にミッションやバリューなどの形で表明していました。しかし、そこから外的環境は変わりましたし、手掛けるプロジェクトの幅がずいぶん広がりました。また、グローバル展開も相まって多様な社員が増えたこともあり、経営方針アップデートの機運が高まりました。
結果的に、新しいビジョン、ミッション、行動規範、経営方針書が出来上がりました。「経営方針書」が独立して存在する、というのが特徴的です。
榊巻:
実は2016年ごろに一度、アップデートに失敗したんです。ビジョンやミッションだけでスッキリした文言にまとめようとしたんですが「でも、こういう場合はどうするの?」「その表現にはピンとこない」という意見が出てきて、まとめきれませんでした。
その後「あぁ、こういうのをスッキリまとめきれないほど、ケンブリッジは多様性のある組織になったんだな」とポジティブに受け止めることにしました。そして「いっそのこと、変にまとめるのではなく、冗長でもいいから大事にしていることは全部書き出そう」と考えました。その結果、対外的に公表するミッション、ビジョン、行動規範以外に「経営方針書」を作ることにしたのです。
経営方針書は、様々な意思決定の拠り所になっている背景・考え方・価値観を、徹底的に言語化したものです。叩き台は経営会議で作りましたが、それを毎月の全社集会で社員にひとつずつ動機も含めて丁寧に説明し、フィードバックをもらいながら、練り上げていきました。
なんというか、ケンブリッジの社員だからこそわかる書きっぷりが多いですね。
榊巻:
はい、社員がケンブリッジのあるべき姿をイメージし、将来へ向けて議論するためのとっかかりになればいい、くらいの粒度で書いています。社外の方に意図通りに読み取っていただけるような丁寧さで書いてはないので、このまま一般に公開するのは難しいでしょうね。
全部を読み通すのが大変なほどのボリュームです。
榊巻:
経営陣が2006年から15年間、毎週の経営会議で議論してきたことの結果なんです。暗黙の前提となっていた考え方や価値観を全部て言語化したので、そりゃ多くなるよ、と思います(笑)。
2020年5月現在で6つのカテゴリー(全体方針、サービスのあり方、案件選択、変化と意思決定、会社と社員、人材育成)、37個の方針を掲げています。トータルで12,000字ほど。方針によっては相互に若干矛盾するものも含んでいたりしますが、これもまた多様性の現れだし、ケンブリッジらしくていいかな、と思ってそのままにしています。
そういえばちょっと前にも内容が一部更新されていました。
榊巻:
経営方針書の中に「経営方針書は毎年見直す」と定めています。これは「判断基準や考え方は完成されたものではなく、日々変わっていく発展途上のものである」という考え方に立脚しています。こういうのも「意思決定の背景にあるもの」なんですよね。
#03『ケンブリッジを職場に選ぶ理由』を読めば「今のケンブリッジ」がわかる
100ページに及ぶ「ケンブリッジを職場に選ぶ理由」のごく一部。「今のケンブリッジ」を様々な観点から読み解くことができる。
昨年作った『ケンブリッジを職場に選ぶ理由』。これも「見える化」施策の一環だと思いますが、やはり相当ボリュームがあるし、頻繁に更新されていますね。
榊巻:
パワーポイントの資料で100ページほどですね。作った当初は「こんな長いの、だれが読むの?」という意見がありましたが、そこにはちゃんと理由があります。
『ケンブリッジを職場に選ぶ理由』のコンセプトは3点あって、
- 素早く会社全体を見渡せるようなインデックス(目次)である
- 社内外の人たちとのコミュニケーションのきっかけにする
- よく聞かれるものからアップデートしていく
です。
詳しく教えてください。
榊巻:
ケンブリッジには「制度は作りたい人が作る」というカルチャーがあって、ちょっとプロジェクトに没頭しているといつの間にか誰かが中心となってナイスな制度を増やしていた、ということがざらにあります。
社員が増えるに従って、制度やルールなどに関する質問をいろんなところから受け、その都度、慌てて探す、みたいなことが頻繁に起こるようになったんです。「あちこちで同じこと言ってるな」と思いながら毎回説明してるうちに「あぁ、ちゃんと『今のケンブリッジ』を俯瞰できる資料を作ろう」と思ったんです。
だから「会社全体を見渡せるようなインデックス」なんですね。
榊巻:
そうです。それで、どんな資料にすればいいだろう、と考えていたところに、GPTW受賞企業で働きがい勉強会仲間のコンカーさんに『コンカーを職場に選ぶ理由』を見せてもらい、「これだ!」と。本当に、コンカーさんには感謝しかありません。
『コンカーを職場に選ぶ理由』がよかったのは、会社の戦略や働きがいを高めるための施策、職場の雰囲気など、様々な視点の「これがコンカーです」が圧倒的なボリューム(約200ページ)で書かれていて、毎回読むごとに発見がある。
『コンカーを職場に選ぶ理由』を読んだ結果、
- ケンブリッジが考えていること、大事にしていることを
- 長くてもいいからきちんと書き込んで
- その時の読み手の状態によって読みたいところだけ読んでもらって、
- こちらの想いがきちんと伝わる
そんなドキュメントに仕立ててればいいんだ、と腹落ちしてからは、とにかく書きまくりました。
これも経営方針書と一緒で、一度できれいにまとめきる、というよりは、いったん書き上げて、あとから追加・修正していくスタイルにしています。
反応はどうですか?
榊巻:
社内では「社外にケンブリッジのことを説明しやすくなった」と好評です。本をお渡しする、赤坂のオフィスにお越しいただく、などに比べると、ずいぶんカジュアルですよね。
採用の現場でも、事前に応募者の方にザッと目を通していただき、アンテナに引っかかった点、もっと詳しく聞いてみたい点を準備してもらうことで、中身の濃い面接ができるようになりましたし、選考途中の辞退が少なくなった印象もあります。
応募者の方から「ここまで自分たちのことを言語化し、発信している会社は見たことがない」と仰っていただいたこともあります。
見る人全員が最初から最後まで読んでくれると思ってないし、グッとくるところは人によって違うし、好きなところだけ見てくれればよいと思っています。辞書級に分厚くても、きちんとインデックスになっていて、中身がちゃんと伝われば、それでいい。自分で情報を取捨選択する時代ですしね。
社員や採用候補者に「ケンブリッジで働く覚悟」を問うページもありますね。
榊巻:
意識して入れましたね。
やっぱり、どこまでいっても「自分で自分の会社をよりよくしていく」人が、「Facilitate Positive Change」という本質を持つケンブリッジに合っていると思っているし、それがケンブリッジの働きがいを高める一番の原動力になる、と確信していますので。
なるほど。働きがいを高める、って終わりのない活動ですが、今後も社員全員でさらなる高みへいきましょう。ありがとうございました。
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