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ストーリー

DXで未来を描くには3種の人材が必要だ

皆さんの会社では、DX推進の取り組みをされていますか? 経営者の方はその取り組みの重要性を理解されていますか?

 

ケンブリッジに日々持ち込まれるDX推進に関するご相談には、共通した困惑やお悩みがあります。「今すぐDXしないといけないほど困ってない」「企画せよと言われても何から手を付けてよいかわからない」「企画を作っても経営者にわかってもらえない」・・・

今回はこうした困惑やお悩みに対する3つの打開策を、弊社ディレクターの榊巻がお伝えします。

 

併せて、録画配信「DXの始め方 7つの心構え」もご覧ください。

 

(インタビュー 2020年10月)

#01DXの相談には危機感が希薄?

DXの3大あるある「とりあえず」「それっぽいコンセプト」「ソリューションください」

ここ1年ほど、DX(デジタル・トランスフォーメーション)に関するご相談が急増しているそうですね。

 

榊巻:

確かに増えた実感がありますね。何をもってDXというのかは難しいところですが、DX案件は、旧来の業務改革案件と少し違った難しさがあると思っています。

 

 

旧来よりいただく企業変革や業務改革のご相談と、DXプロジェクトでは何が異なるのでしょうか?

 

榊巻:

「DXの始め方」というセミナーの中でもお話しているのですが、DXに関するご相談には、「明確な困りごと」がない場合が多いと思います。

企業変革や業務改革のご相談に共通するのは「システムの老朽化が限界で、今入れ替えないと会社のインフラが崩壊してしまう」「紙と手作業での業務効率が悪く、サービス品質が低下している」などなど、明確に問題を抱えており、それを解決したいと考えている場合が多いと感じています。

しかしDXに関するご相談では、例えば「デッドラインはいつですか?」とお聞きすると「特に決まっていません」とか、「なぜDX推進することになったんですか?」「いつのまにか部署ができまして」といった具合に、わかりやすく明確な「解くべき課題」が設定されていない場合が多いように思います。

要は、DXを推進しなくても、今すぐに会社が危機に陥るわけではないのです。

 

 

「いつのまにか部署ができる」ってすごいですね。でも、部署を作るからには、なんらか「DXを通じて会社の未来を〇〇したい」という経営者の意図があるのでは?

 

榊巻:

ご相談を聞く限り、明確な意図を持った経営者の方は少ないようです。それでも部署ができてしまう背景には、「DX」という言葉が、そもそもなんだかよくわからない曖昧なものだから、というのがあると思います。だから「他社がやってるので」「世間で騒がれてるから」とりあえず始めてしまっている。

 

   

DXといっても、会社全体を巻き込む抜本的なビジネス変革もあれば、日々の業務のデジタルシフトもあります。なかなか他社事例が参考になりにくい領域ですね。

 

榊巻:

そのとおりですね。加えて「現状のまずさ」から始められる業務改革と違い、なにも取っ掛かりがないままDXを始めるケースも多く、ますます他社事例は参考にしづらい。いろんな事例を見過ぎて、余計に何から手を付ければよいかわからなくなってしまった、という相談も受けるくらいです。

#02「新しい価値観」は根源的に受け入れがたい

ご相談の中には、それでもなんとかDXの企画を形にして「こういうことをやりたいんだ」と経営者にぶつけても承認されないケースも多い、と聞きました。

 

榊巻:

そうですね。企画自体が練られていないとか、色々要因はあるのでしょうけど、一つには「経営者が企画の良さを理解できない」というケースもあるように思います。

日本の経営者の多くは、これまで目の前の問題に向き合い、堅実に解決することで会社を盛り上げ、けん引してきた、いわゆる「現場叩き上げ」の人たちです。その「問題解決型の思考」と、今は困ってないが、これからの会社の未来にはこれが必要だ、という「創造型の思考」には大きなギャップがある気がします。ケンブリッジ社内ですら、なにか新しいことを始めようとする人に対して「なぜそれがいま必要なのか分からない」という人たちが出ます。

「こうすると問題が解決できる」と言われれば良し悪しの判断がしやすいが、「今は困ってないけど、こうするとデジタルを基軸とした新しい世界が作り出せる」と言われても、極めて判断が難しいですよね。また、人間は見たことのない「新しいもの」を根源的に受け入れがたいものです。イノベーター理論とキャズム理論を引用するまでもなく自明なことです。

 

 

何か打開策はないのでしょうか?

 

榊巻:

大きく3つの打開策があります。

ひとつめは、DX推進部門と経営者では「見るべき未来の遠さ」が違うんだ、とお互いに認識することです。

DXはITの力を使った変革です。そしてITは恐ろしいスピードで進化します。つまりDXの企画は、会社の中長期の経営戦略みたいな5年も10年も未来の話である必要はないのです。

だからDX推進部門は「ちょっと先の未来をまず描いてみたいので、現場に任せてくれ」と言うべきだし、経営者は「やってみなはれ」と言うべきなんだと思います。

その上で、経営者は、DX推進部門が実現させる「ちょっと先の未来」が、会社のミッションやビジョン、経営戦略と大きくずれてないか、過度な投資になっていないか、のリスクコントロールをすればいいんだと思います。

経営の仕事は、方向性を示し腹を括って任せることであり、企画にあれこれケチを付けることではないと思うのです。

 

  

始める前にお互いの価値観をすり合わせることにパワーをかけるのではなく、まずDX推進を始めて、実現した未来の姿を会社の方向性とすり合わせていくのが大事なんですね。

 

榊巻:

そうです。

もちろんDX推進部門は「ひとたび未来の姿を実現させたら終わり」ではなく、会社の状態やITの進化に合わせて、次々と「その先の未来の姿」を描いていかなければならない。
これから踏み出す未来はぬかるみかもしれないが、まずは一歩踏み出してみて、そこで土台を固める。そして、また一歩踏み出す、というイメージです。やってみてわかることも本当に多いですから。

#03DX推進部門に必要な人材とは

経営者と「妄想力」人材をつなぐ、「ファシリテート」人材が必要だ

2つ目の打開策はなんでしょうか。

 

榊巻:

経営者に「やってみなはれ」と言ってもらえるようにに、企画の質を高めることです。

先ほど述べたように、DXには業務改革における「現状のまずさ」のような明確な取っ掛かりがありません。そんな中でDXの企画の質を高めるには「経営者が想像できないような会社の未来を描けそうな、新しい価値観を持った人材」を見つけてくるのが一番です。

 

  

そんな簡単に見つかるものでしょうか。

 

榊巻:

難しいとは思いますが、見つけ方はあると思います。方法のひとつは「妄想力の高い人材」を社内で見つけてくること。日頃から「こうしたい」「こうなったらいいのに」「これを試してみたい」と言っている社員ですね。一般的に、若者、よそ者、新参者が該当することが多いと言われていますね。

こうした人材と共に、いったん会社の現状を俯瞰して眺めてみる。その上で「将来の姿」を描いてみる、というやり方。我々ケンブリッジはこの流れを集中討議形式でお手伝いすることも多いのですが、ここで「飛躍した未来」を描ける場合も多いですね。

 

  

飛躍した未来、といっても「なぜそれをわが社で?」は必要では?

 

榊巻:

はい、その未来の根底に、顧客や現場の人たちの気持ちや想いがきちんと織り込まれていることが極めて重要です。「困ってないけど、ここがちょっと」や「こうなったらもっと気持ちよく働けるのに」といった明確な困りごとではない「声なき声」を拾ってきて、それをテコにして、飛躍した未来を描けるか、がポイントです。

 

  
先進的なITに対する知見は必要でしょうか?

 

榊巻:

ある程度は必要ですが「あぁ、今のITのトレンドを踏まえると、こんな未来が描けそうだな」と妄想するくらいに留めて、いったん忘れるのがちょうどよいと思います。
先ほども述べたように、ITは恐ろしいスピードで進化しますから、今あるITでできることを踏まえて、会社の未来を妄想する必要はありません。「このツールを入れればDXできる」というのが本当なら、DXで困ってる人たちがこんなにたくさん出てこないでしょう。

あくまで顧客や現場の人たちにフォーカスした「人間中心」の妄想であるべきです。

 

 

3つめの打開策はなんでしょうか?

 

榊巻:

態勢の質を高めることです。未知の世界を作っていくDXプロジェクトの態勢の質を高めるためには、3種類の人材が必要になると考えています。

まず、企画の質を高められる「妄想力」人材。次に企画を後押ししてくれる「やってみなはれ」経営者。ここまでは先ほどお話ししましたね。

これらに加えて「妄想力」人材とともに未来を描き、経営者に信頼されプロジェクトを任される「ファシリテート人材」が必要だと思っています。「妄想力」人材だけでは、経営者から「やってみなはれ」を引き出せない可能性があるし、その後変革をリードしていく力も足りない場合が多いように思います。妄想力と実行力は違いますから。

 

 

確かに「妄想力」人材が企画を経営者にぶつけて「やってみなはれ」になる可能性は低い気がしますね。両者を橋渡しして、変革を進めていける人材が必要だと言うことですね。

 

榊巻:

そのとおりです。

 

  

「ファシリテート」人材には、 どういう人が適しているでしょうか?

 

榊巻:

「こいつなら会社のちょっと先の将来を任せてもいい」と経営者に実績を買われている人がよいでしょう。

また、経営者と対面で話をできるくらいの階層の人だとなお良いです。完全にDX企画が出来上がってから経営者にぶつけても、先ほど述べたように「よくわからん」で終わってしまいます。新たな世界感を理解するのには時間が掛かるものです。短い時間でもいいから定期的に経営者に時間を取ってもらい、徐々に「やってみなはれ」な心持ちになってもらえるような努力が必要です。

DXに対する気構えや、「妄想人材」の大切さを伝達したり、先進的なITトレンドの紹介、実現しようとしている世界を少しずつ語るなど、インプットしておくことは山ほどあります。

 

 

なるほど。最後にこれからDXを企画・推進する方々へメッセージがあればお願いします。

 

榊巻:

DXといっても、最終的には業務を変え、ITを変えるわけですから、通常の業務改革の進め方と変わらない部分がたくさんあります。今日お話してきたとおり、最初の「立ち上げ方」に多少の工夫が必要なだけです。浮足立たずに地に足を付けて取り組んでもらいたいですね。ただし、最初の立ち上げ方を間違うとその後が辛いので、ぜひ企画がゆるい段階から、ケンブリッジに相談をいただけると嬉しいですね。

 

  

ありがとうございました。

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インタビュイー名

榊巻 亮
代表取締役社長

2008年入社。コンサルタントとして数々の改革、DXを手掛ける。CMO、CHOを経て、2021年に代表取締役社長に。現場は変わらず見てるので、社長業が純増し、頭を抱える日々。

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