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組織・業務変革サービスの具体的な進め方

画像:現状分析
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#03現状分析

そもそも調査ってなに?

「コンサルタントが入って業務調査を実施したのだが、これから何をどうすれば業務改善につながるのか、まったくわからない」と言いながらリングファイルの山を見せていただくことがよくあります。中身は、業務フローや帳票一覧、現場へのヒアリングメモなどです。一見重要そうですが、単なる事実の羅列と現場の定性的な意見がファイルされているだけです。 こういった「調査のための調査」では、残念ながら業務改善は起こせません。そもそも何のために調査が必要なのでしょうか。そしてそれをどのように活かしていくのでしょうか。

ケンブリッジでは、現状調査・分析とは、現状とゴールのギャップ(解決すべき課題)を誰の目にもわかる形で可視化し、ゴールへ向かうための施策を検討するためのインプットを作るためのものと考えています。 「現状調査は不要。改善施策の検討にすぐ入りたい」というオーダーをいただくこともありますが、現状調査・分析を実施しないと、施策効果を現状とのギャップから定量的に示せませんし、どの施策に注力すべきか、参加者全員で合意形成することが困難になります。

 

現状調査はこう進めるべし

現状調査は時間との戦いです。時間をかけすぎると事業を取り巻く状況は変わってしまうかもしれませんし、改革の気運がトーンダウンしてしまう可能性があります。逆に短時間で慌てて実施すると、重要な課題を見落としたりします。また、ともすればゴールやコンセプトを脇に置いて調査すること自体が目的になってしまうこともあります。 ケンブリッジは、こういったことを防ぐ現状調査の進め方をご提案します。

1. まずは全体から、徐々に深く

最初に全体感を押さえ、現場の方と問題のありかに当たりをつけます。 問題のありかにフォーカスしつつ、ヒアリングに濃淡をつけます。 問題のありそうなところは手厚く調べ、なさそうなところは極めてあっさり調べるなど、さらに時間を短縮させます。

図表8 現状調査のセオリー

2. その場で書きだして全員で確認

ケンブリッジでは、模造紙とプロジェクターを使い、ヒアリング中に、調査資料を仕上げていきます。作業時間の短縮だけでなく、現場との認識齟齬も防止できます。一般的なコンサルティング会社はヒアリングした後、ヒアリング結果を持ち帰り、自社の事務所できれいな資料に仕上げて提出しますが、これは「調査の目的化」の最たる例です。調査の結果を綺麗な資料に落とすなど、本来はどうでも良いことです。調査の結果わかったこと、見えてきたこと、変えるべきポイント、施策のヒントをしっかりと見出し、ひとつずつ素早く関係者と合意していくことが重要です。見栄えをある程度犠牲にしてでも、ヒアリング中に資料の仕上げと合意形成を同時に進めるのが、もっとも効率的な調査の進め方なのです。

現場の方に書いていただくのも有効です。例えば、同じ部の方全員に自身の業務割合を円グラフで書いていただくと、お互い、何にどれだけ時間を使っているのかが分かり、業務効率化議論の切り口になったりします。

図表9 (事例)現場の方に書いていただいた1日の業務割合

3. ヒアリングのコツ~順序と数量を大切に

業務は「流れ」です。したがって時系列でヒアリングするのが基本です。これにより、確認の漏れを防ぎます。Activity一覧というフォーマットを使いながら、広く素早く時系列で業務を押さえていきます。

また、「大変さ」の感じ方は人それぞれです。「すごく」「とても」などの感覚値は時間や頻度などの数値で客観化します。よく「測ったことがない」と仰る方がいますが、1日なのか1週間なのか1ヶ月なのかが分かるだけでも、その度合いを把握することができます。

分析の肝は「構造」と「実感」

「調査」の次は「分析」です。業務改善において分析は極めて重要です。では、分析とは何をどうすることなのでしょうか?何をしたら分析したことになるのでしょうか?良い分析とはどういうものでしょうか?すぐに答えられるでしょうか。

ケンブリッジの考える分析とは、施策検討のための「構造化」と「実感の醸成」です。施策を考えるために調査してきた膨大な事実を、現場で実際に何が起きているのかを分かるように構造化して示し、「なるほど確かにこれはマズイ」という実感を引き出すのです。

構造化された調査結果と「マズい」という実感が揃って、初めて納得度の高い施策が生まれるのです。 クールな分析結果を示すのは非常に難しく、我々も毎回苦労しながら実施していますが、ケンブリッジのコンサルタントが常に気を付けていることを3つご紹介します。



1. 資料に、きちんと示唆が入っているか

分析結果を受け取った人が「だから何?」とならず、「ここを改善できる施策を作ろう」と行動できるようなポイントが明示的に含まれていることが必要です。 例えば、様々な用途の業務用エクセルが新旧400種類もあり、エクセルデータを作るだけで毎月かなりの時間を要していて非効率である、という調査結果。みなさんならどう分析しますか。 示唆の無い典型的な分析がこれです。

 

図表10 (事例)施策がイメージできない分析

多くのエクセルを「通知系」「台帳系」などでグルーピングしています。一見、機能別に整理されていますが「通知のためのエクセルがある」ことはわかっても、この結果を受け取ってどうすればいいのでしょうか。どこが改善の切り口なのか、どのように施策へ落とし込めばいいのか、が分かりません。 一方、示唆のある分析はこれです。

 

図表11 (事例)施策がイメージできる分析

元は同じ調査データですが、この分析結果は、「情報を蓄積しておくための台帳」「他システムへ渡すデータ」「外部への提出書類」という用途別の切り口でグルーピングしています。これならそれぞれのエクセルを将来どうしていくか議論できます。例えばこの資料を見ながら、参加者は「だから何?」とならず、「台帳目的のエクセルデータは、データのセキュリティやファイル破損のリスクを考えシステム化すべき」「他部署への依頼報告は別ツールへ置き換えるべき」などの議論をすることができます。つまり「システム化してエクセルを廃止」「現状維持」「全面廃止」などの施策検討をそのまま、この資料を通じてできるのです。 このように「施策に繋がる示唆」まで導けるかどうかが、クールな分析か否かのポイントになります。

2. 余計な情報が削ぎ落とされているか
相手はそこにある情報をすべて受け取ろうとしますので、示唆に必要のない情報も入っていると、混乱してしまいます。あらかじめ「どういう視点で見てほしい」「こういう示唆を与えたい」と決めて、それに必要のない情報は資料から除外します。

3. コンセプトの裏付けになるか
ゴールやコンセプトは、それを作った時点では、まだ仮説です。分析結果を通じて、「確かに我々の立てたコンセプトは正しかった」と確証を持てることが大切です。

例えば前章でご紹介した古河電工の事例では、「ハブ&スポークなら業務効率化できる」という仮説でコンセプトを作りましたので、この仮説を裏付けられるかが現状分析の最大のポイントでした。 そこで、全715の業務を「仕事をやる場所の制約」という観点で分類し、集約化できそうな業務を特定したのです。

 

図表3 (事例)古河電工の人事BPRプロジェクトのコンセプト「ハブ&スポーク」(再掲)


 

図表12 (事例)古河電工の人事BPRプロジェクトの分析

「C名残り型は、すぐに撤廃しよう」「D制度特製型は、細かい制度の違いを標準化して業務をまとめよう」などの議論を、この分析結果を見ながら進めることができました。

実際の調査

こうした分析をするためには、基礎調査がかかせません。ケンブリッジが現場で実際に使っている調査フォーマットやコツをご紹介します。

1. 調査フォーマット(基本編)

① 申請一覧

業務改善のポイントのひとつになりがちな多段階承認。実際には「ハンコをつくだけ」の状態になっていることがよくあります。こうした現状を明らかにし、不要な承認行為をあぶりだすための一覧です。

図表13 (事例)申請一覧

② アクティビティ一覧

業務フローは業務に分岐が多く関係者が多い(部門横断)場合には有効ですが、作成や修正に手間がかかります。また、盛り込める情報量が限られます。 ケンブリッジでは、ほぼ一本道で部門内完結するような業務には、アクティビティ一覧を使います。

図表14 (事例)アクティビティ一覧

③ ファンクショナリティ・マトリクス

現行システム機能をマトリクス形式で整理したもの。部門横断で一覧になっており、機能の抜け漏れを確認できます。時には、通常の企業によくある機能が実は実装されておらず非効率な手作業を生んでいることが分かったりします。

図表15 (事例)ファンクショナリティ・マトリクス

2. 調査フォーマット(応用編)

基本的な調査結果同士を組み合わせてマトリクスを作ることで、より一覧性が高く、分析の切り口を得られやすい調査結果を作ることができます。プロジェクトにより作るマトリクスは異なりますが、いくつかご紹介します。

① 申請一覧とチェックプロセスマトリクス

申請一覧と承認ルートを組み合わせ、承認プロセス効率化の切り口を見出すためのマトリクスです。

図表16 (事例)申請一覧とチェックプロセスマトリクス

② トレーサビリティ・マトリクス

アクティビティ一覧とファンクショナリティ・マトリクスの組み合わせ。まったくシステムを使っていない業務や、逆に、どの業務でも使っていない機能を浮き彫りにします。業務効率化や次期システム機能検討のベースにします。

図表17 (事例)トレーサビリティ・マトリクス