CASE
STUDYお客様事例
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社様
三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社は「金融 x IT」を旗印に、三菱UFJフィナンシャル・グループ(以下、MUFG)全体のDXを支えるITカンパニーです。
グループ内外の企業を巻き込んださまざまな金融ビジネスに参画する同社は、システム開発プロジェクトの上流工程におけるノウハウ確立と人材育成に関する課題を解決するため、2023年12月より『プロジェクトリーダーおよびプロジェクトチーム養成学校』のFoundationコース、Planningコースを継続的に受講し、その数は延べ91名になります(2025年2月時点)。
このインタビューでは、養成学校の受講を決定・推進した永嶋様、受講者である西田様と山本様に、なぜ養成学校を採用するに至ったか、そこで得た学びや受講後の組織の変化について語っていただきました。
左から(所属はインタビュー当時のものです)
西田 拓央 様(データサイエンス部 ITスペシャリスト)
山本 祥子 様(業務基盤第四部 システムエンジニア)
永嶋 泰幸 様(DX推進部 部長)
#01システム部門が要件定義の前工程にあえて踏み込む理由
貴社から多くの社員の方々に弊社の『プロジェクトリーダーおよびプロジェクトチーム養成学校』(以下、養成学校)を受講いただいています。大きな意思決定だと思うのですが、そこに至った背景として、まず、貴社がお持ちの課題感を教えてください。 | |
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永嶋 | 当社はMUFGのさまざまなシステム開発プロジェクトに参画しています。その中で「超上流工程」の進め方の形式知化と推進する人材の育成がいずれも不足している、という重篤な課題感を持っていました。 |
超上流工程とは、システム開発のどの部分ですか? | |
永嶋 | 要件定義を始める前に、プロジェクトの目的を定め、現状調査と課題分析を実施する工程です。 |
なぜ超上流工程にとりわけ課題感を感じておられるのでしょうか。 | |
永嶋 | MUFGのプロジェクトには、グループ内外の複数企業から多くの関係者が参画します。関係各所のやりたいことが本当にさまざまなため、プロジェクトが始まった段階で関係者を巻き込み、立場や意見を整理して合意形成を進めなければ、後続の工程で苦戦を強いられます。私自身、何度も痛い目を見ました。 |
確かに超上流で関係者の合意形成を推進することは極めて重要です。しかしその工程はユーザー部門側のメンバーがリードするのが通例ではないでしょうか。システム部門側である貴社があえてそこに踏み込むのはなぜですか? | |
永嶋 | 今の時代、大きなプロジェクトはITを活用することが前提となっています。これまでのようにシステム部門は要件定義から参加してユーザーの要求に合わせてITを考え始めればよい、という考え方ではプロジェクトはうまくいかなくなりました。我々システム部門が超上流工程から積極的に入り込み、プロジェクトの目的策定や課題分析の部分にIT要素を織り込みながらスムーズに要件定義に流していく必要があるのです。 |
なるほど、そうなるとシステム部門側のメンバーにも超上流工程を推進する技術と人材が必要になりますね。 | |
永嶋 | そのとおりです。しかしそこに気づいたものの、しばらくは超上流工程の進め方が曖昧で、優秀な個人のスキルに任せてしまっていました。これではいけない、と数年前から社長の肝煎りで超上流工程のノウハウ整備と推進人材の育成を全社的に進めることにしたのです。 |
経営者の方が人材育成に率先して取り組む姿勢はとても大事ですね。 | |
永嶋 | 当社では社長みずから講師となりさまざまな研修を実施しています。 それでも超上流工程を推進する人材の育成には不十分だ、と感じていました。座学だけでなく、実際に手を動かしながら、超上流工程のノウハウも推進人材も得られる研修はないか、と探していたところ、ケンブリッジの養成学校を知りました。 |
どのようにして養成学校を知っていただいたのでしょうか。 | |
永嶋 | 実は、社内研修の中でケンブリッジの『システムを作らせる技術』や『会議の教科書』などの書籍を教材にしていたのです。ケンブリッジの本にはすぐに実践できるノウハウが詰まっていると感じ、ホームページを拝見して養成学校のことを知りました。 養成学校の研修内容がまさに超上流工程に関するものであること、また、十分すぎるくらい手を動かすことが求められる超実践的な進め方であることから、受講を決めました。 |
#02受講者、上司がそれぞれの立場から社内に学びを浸透させる

Foundationコースの授業中、真剣に議論するみなさん
超上流工程の進め方を学ぶのはPlanningコースですが、その前にプロジェクトワークの基本動作を学ぶFoundationコースを受講いただきました。 | |
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永嶋 | 超上流工程に限らず、プロジェクトでは多くのコミュニケーションが発生し、誰かがファシリテートしなければ物事は前に進みません。そのため、超上流工程の進め方を学ぶ前にプロジェクトワーク全般に効く会議ファシリテーションをFoundationコースで修得しようと考えました。 |
Foundationコースでは8つの基礎スキルを学べますが、とりわけ会議ファシリテーションを重視した、ということですね。山本さんと西田さんは、実際に受講してみていかがでしたか。 | |
山本 | さまざまなシーンでファシリテーションの効果を実感しています。中でも、開催数の多いリモート会議をうまくリードできるようになったのは大きな成果です。
これまでのリモート会議では、参加者は画面オフ、会議中シーンとしてしまう、などコミュニケーションの取りづらさに苦慮していました。ここに授業で学んだことを持ち込み、会議のやり方を改善しました。例えば、相手と同じ意見の場合でも敢えて肯定の差し込みをする、議論の前に参加者同士で期待値を交換する、などが有効でした。現在は、リモート会議でも参加者から意見を引き出し、議論を活性化できるようになりました。 |
西田 | Foundationコースを共に受講した5名で会議をしてみて、受講前に比べて格段に議論しやすくなったことに驚きました。参加者全員がファシリテーターの意識をもって会議に臨んだことで、発言や意見の足りない部分を互いにフォローしあおうという空気感が生まれ、論点がより明確になり、議論に深みが増したのです。
また、実際のプロジェクトで会議のファシリテーターを務める際、冒頭でゴールと進め方を伝えるように心がけていたところ、他のメンバーも徐々に真似してくれるようになりました。その結果、プロジェクトにおける会議の品質が全体的に向上しつつあると感じます。 |
養成学校では、研修の学びを現場に持ち込みやすくする仕掛けとして、受講生の上司の方にメンター役として参加してもらいます。研修中のエピソードを教えてください。 | |
西田 | 弊社からは永嶋さんに上司役として参加いただきました。毎回の授業後に30分の面談を行い、受講生から講義内容や学びのポイント、宿題の実施結果や所感を共有します。それを受けた永嶋さんから「実務ではこういうシーンがあるけど、どう振舞う?」といった実践的な質問や宿題へのフィードバックをもらいました。また、会社として取り入れるべきアクションを他の社員に広めたい時にも、適宜サポートしてもらいました。 受講者としては、学んだこと、実務に活かしたいことを上司がリアルタイムに把握してくれている状態は非常にありがたかったです。 |
永嶋 | 研修にコストをかけるからには、受講者が学んで終わるのではなく、会社全体にも彼らの学びを浸透させていきたいですよね。そうした観点から、研修期間を通して上司と部下が継続的に議論する場を作る、という仕組みが用意されている点は極めて有効でした。実際、西田さんと山本さんからは学んだことを現場へ浸透させていこうという熱意が常に伝わってきましたし、私もそれをぜひ後押ししたいという気持ちになりました。結果、周囲のメンバーの行動変容にも繋がっています。 |
#03プロジェクト超上流の「なにをどこまで」を納得感高く修得できた

Planningコースで使う「ゴールコンセプトチャート」は山本さんのお気に入り
山本さんと西田さんは、Foundationコースを受講した後すぐにPlanningコースを受講されました。印象に残っていることを教えてください。 | |
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山本 | プロジェクトゴールの作り方から現状分析、施策具体化に至るまで、まさに超上流工程においてやるべきことを順序だててタスクレベルで理解できるので、実務に活かしやすいと感じました。
特に印象深かったのは、そのタスクによって関係者にどういった感情の変化をもたらすか、まで言語化されている点で、超上流工程をあたかもひとつの物語のようにイメージできるようになりました。
また、即効性のあるフレームワークも多く得ることができました。中でもお気に入りはプロジェクトゴールを作る授業で学んだ「ゴールコンセプトチャート」です。授業で作成したゴールコンセプトチャートを自室の壁に貼り、学んだことを忘れないようにしながら実際のプロジェクトに取り組んでいます。 |
西田 | 私もゴールコンセプトチャートは印象に残っています。
ゴールコンセプトチャートを使ってメンバーと「具体的には?」「なぜそう考えるか?」を議論してみると、各自が持っている微妙なイメージの違いが浮き彫りになるんですよね。そこまでやってようやく「結局何がしたいのか」を関係者で合意形成し共通認識化できるんだ、と実感しました。これまでも実際のプロジェクトでゴールを設定してきましたが、後工程でちゃぶ台返しになったこともあり、深掘りが足りてなかったのだと気づきました。 |
山本 | 本を読めば「プロジェクトの初めにゴールを設定せよ」「現状調査は大事だ」と書いてあるのですが、いざ現場で実践しようとすると「実際どうするのか?」「どこまでやれば完了したと言えるのか?」が分からず、なかなか手を動かせませんでした。Planningコースでは、こうしたことが具体的に言語化されている印象を受けました。「こういうことができてないから私は失敗したのか」「ここまでやれば品質を担保できるのだ」を学べたと感じます。 |
永嶋 | 「こういうことが大事だ」と分かっていても、納得感が伴わないと「実践してみよう」と思えないですよね。Planningコースのカリキュラムには、実際のやり方を解像度高く説明する講義や資料、受講者が演習を通じて気づきを得る仕掛けなどが計画的に組み込まれていて、それらを通じて二人の納得感が醸成されていったように見えました。 |
#04受講者の行動変容をテコにプロジェクトを草の根で変えていく

養成学校には受講者の心に残る「ケンブリッジ節」が随所に盛り込まれている
受講を終えられた現在、実際のプロジェクトを進めていくうえで、どのような変化がありましたか。 | |
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山本 | 仕事をする上で視野が広がりました。例えば、開発工程で課題が出てきた際に、超上流工程のどこかに解決のヒントがないか、とプロジェクトをさかのぼって考える癖がつきました。
また会議のシーンでも、ユーザーのふとした発言に対してあえてその意図を引き出す質問をしたり、過去の決定事項を踏まえて案を提示することで参加者の納得感を高めたりしています。 |
西田 | 再現性を持って超上流工程を進められるようになったと感じています。以前は、プロジェクトが停滞した際にはそのつど手探りで問題点や対応策を探っていたのですが、Planningコースで超上流工程の進め方を体系的に学んだ結果、「このプロセスのこの部分が足りてないので、こういうやり方でテコ入れしよう」と言えるようになりました。
超上流工程を進めている同僚から相談を受ける際にも、今どの部分を実施しているのか、次に何をする必要があるのか、を確認しながらアドバイスすることができています。 |
永嶋さんは管理職としてどのような変化を感じていますか。 | |
永嶋 | 養成学校の受講を通じて、社内に超上流工程の進め方や会議のお作法に関するノウハウを浸透させていくきっかけを掴めたことは大きな変化です。
もともと社員数名が養成学校を受講しただけ、資料を持ち帰っただけで、プロジェクトが劇的に変化することはありえないと思っていました。
しかし、西田さんや山本さんのようにプロジェクトにおける振る舞いや観点が変わった社員が、実務の中で自分たちの気づきや問題意識を他のメンバーへ共有することを継続していけば、プロジェクトが、ひいては会社が草の根的に変わっていくのではないか、と考えます。
もうひとつ、養成学校には受講者の心に残る「ケンブリッジ節」が随所に効いていて、これがノウハウの浸透を後押ししている、と感じました。「業務改革に正解はない、私はこう捉えたという思想があるだけ」など、受講生だけでなく上司である私にもグサッと刺さりましたし、その先を聞いてみたいと思えました。言葉の使い方ひとつですが、ノウハウ浸透には大事なことですよね。 |
#05グループ横断の組織変革につながるうねりを生み出したい

三菱UFJ銀行と三菱UFJインフォメーションテクノロジーの社員限定コースを開設
最後に、金融業の IT を担う立場から今後の展望をお願いします。 | |
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西田 | 金融業には巨大で複雑に絡み合うITが多く、1つのシステムを変えようとすると複数のシステムに影響します。調整が必要な関係者が膨れ上がり、意見をまとめなければならない会議が増えます。そんな状況で養成学校を通じて学んだファシリテーションスキルを活用できれば、プロジェクトはスムーズに進むようになると考えます。そのためにも、学んだことを周囲に広めたり実際にやってみせたりすることで社内にファシリテーターを増やしていきたいです。 |
山本 | Planningコースで修得した技術をユーザー部門に積極的に共有して、超上流工程を一緒に進めていきたいです。ユーザー部門とシステム部門が最初からプロジェクトを協働することが成功への近道なのだ、という意識を会社に浸透させていければと思います。 |
永嶋 | MUFGの大小さまざまな事業に IT の専門家としてスピーディに対応できるようになるには、多くの環境を整える必要があります。中でも重要なのは、社員個々人が仕事のパフォーマンスをあげながら活躍の場を拡大していくこと、また社員がそれらに自律的に取り組めるよう他のメンバーやチームがそれを支えることです。こうした環境づくりにボトムアップとトップダウンの両面でアプローチしていきたいです。
また、養成学校で培ったノウハウを活用して、全社横断のコミュニケーションを意図的に仕掛けていきたいです。何か問題が発生した時に所属部門の枠にとらわれずに社内を見回し「あの人に聞いてみよう、うまく巻き込んでみよう」という動きが増えていくと、それが組織変革、社員の意識改革につながっていくと思うのです。プロジェクトはさまざまな問題が発生するのでこうした動きを仕掛けやすい場です。プロジェクトを通じてフットワーク軽く社内を動き回る社員を増やしていきたいです。
ちょうど今、親会社である三菱UFJ銀行と当社のみを対象としたFoundationコースをケンブリッジに開催いただいています。ユーザー部門、システム部門の垣根を超えてプロジェクトに取り組むための共通言語を作るとともに、グループ横断の組織変革につながるうねりを生み出すきっかけになれば、と期待しています。 |
本日は、貴重なお話ありがとうございました。 |