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お客様事例

公益財団法人 プラン・インターナショナル・ジャパン様

画像:公益財団法人 プラン・インターナショナル・ジャパン様
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国際NGO(非政府組織)であるプラン・インターナショナル・ジャパン様は、「基幹業務・システム刷新、およびCRM導入」プロジェクトを行うにあたり、「本音で議論できるチーム」「自走できる組織」を目指して、変革マインドの醸成を強みとするケンブリッジに「育成型・協働型」の支援を依頼されました。

今回は、ケンブリッジの梅澤、為野、塚本とともに、プロジェクトマネージャーを務められた大谷様、楠様に参加いただき、多くの制約や困難が伴うプロジェクトを軌道に乗せ、組織や人の変革も実現できた要因についてうかがいました。

#01子どもたち(特に女の子や女性)を支える国際NGO

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プラン・インターナショナル 大谷様/楠様

まずは、プラン・インターナショナルの概要について教えてください。
大谷 プラン・インターナショナルは1937年の創設以来、子どもたちの権利を推進し、貧困や差別のない社会を実現するため、途上国を中心に世界70カ国以上で活動する国連に公認・登録された国際NGO(非政府組織)です。とりわけ、女の子や女性の支援に注力していることが特徴です。世界には「女の子だから」「女性だから」という理由だけで過酷な状況に追い込まれている女の子や女性たちが数多く存在し、彼女たちを支えることが世界をより良く変えることにつながると考えています。


日本オフィスとなるプラン・インターナショナル・ジャパン(以下、プラン)は1983年に設立し、現在は内閣府認定の公益財団法人として活動しています。活動資金の主体は個人、企業や団体からの寄付金で、世界では約108万人、日本では約6万人の支援者に支えられ、国内外で様々な支援活動を行っています。


寄付の方法は「1回限りの寄付」と「毎月の継続的な寄付」があり、私たちが重視しているのが後者です。世界が抱えている問題は根が深く、複雑に絡み合っているため、単発の援助や「与える」「施す」といった一方的な支援では変化を生み出せません。私たちの最終目標「地域の自立」を達成するためには、範囲を限定した「点」ではなく、分野横断的な「面」の支援を継続的に行うことが重要です。


その具体的な方法が「プラン・スポンサーシップ」で、毎月数千円の寄付を通じて、教育や医療など広い分野で継続的な支援を行うものです。支援者は支援地域を代表して活動の進捗や成果を伝えてくれる「チャイルド」との手紙等での交流を通じて、途上国の課題を知り、子どもたちの成長や地域の発展を見守ることができます。こうした「顔の見える支援」ができることも「プラン・スポンサーシップ」の大きな特徴です。

組織の特徴についてはいかがでしょうか。
昨今は社会性の高いビジョンやビジネスに共感して就職先を選ぶ人が増えていますが、NGOに入職する人も同様で、約70名いるプランのスタッフも活動への使命感や思い入れが強く、支援者に対するホスピタリティ意識も高いといった傾向があります。それだけに、全体最適よりも部分最適の選択をしがちで、納得できなければ上司の指示でも動かないといったこともあります。ただ、基本的に皆穏やかでコンフリクトは少なく、本音をぶつけ合って意思決定や合意形成を行うスタイルではありません。

#02「本音で議論できるチーム」「自走できる組織」を目指して

今回のプロジェクトの経緯について改めて教えてください。
大谷 当時、就任後まもない専務理事が組織のITトランスフォーメーションの必要性について声をあげたことを受け、業務課題を洗い出した結果、真っ先に「基幹業務システムの運用・管理」があがりました。プランの活動では新規支援者の募集とともに、既存支援者に対する支援継続の働きかけが重要になります。しかし、私がいた広報マーケティング部はMAやCRMのツールが未整備で攻めの施策に着手できず、楠さんのリレーション開発部は旧来のシステムへの対応に追われ、手作業や目視確認に時間を取られ、本来やるべき業務にまで手が回っていませでした。


そこで、基幹業務システムの刷新に合わせ、業務効率化やマーケティング強化、支援者のリテンション向上に着手するべく、プロジェクトを実施することになり、誰よりも課題への危機感を覚えていた私と楠さんで共同リーダーを担うことにしました。

このプロジェクトをきっかけに組織の質や活動の精度を高めたいと考え、ITプロジェクトとともに組織変革に長けたコンサル会社を選ぶべく、コンペを行いました。そこで以前、ケンブリッジの白川さんと榊巻さんが書かれた『業務改革の教科書』を読み、感銘を受けたことを思い出し、候補の1社に加えてもらいました。
ケンブリッジを選ばれた理由は?
1つは初回提案討議のインパクト。ケンブリッジの方が部屋に入るなり大きな紙を壁に貼り、スクライブ(板書)しながら説明してくれたのがとても分かりやすく、プロジェクトの全体像や要点がイメージできました。また、私たちの欲張りな要望を踏まえて、

 ①攻め(マーケティング強化/新規支援者獲得)

 ②守り(既存支援者のリテンション向上)

 ③業務システム刷新(非効率業務の排除/①②を支えるための業務システムづくり)

――を実現するプランを提案してくれたことも印象的でした。

大谷 最大の理由は、ケンブリッジのアプローチが良い意味で一番泥臭かったから。一つひとつ納得感を得ながら進み、求める成果を得るためには、そもそも論やゼロベースの議論、本音のぶつけ合いが必要でした。ケンブリッジのプレゼンから、議論や意思決定が曖昧になりがちな私たちを全力でサポートし、「自走できる組織」に成長させようとする熱意が伝わってきました。
ケンブリッジ 梅澤 ケンブリッジもこの数年で組織が拡大し、従来の支援分野だけでなく社会貢献の範囲も広げたいと考えていたタイミングで、ご相談をいただきました。プランの活動に共感したことはもちろん、組織のマインドを変えながら「自立・自走」を目指して支援を行うことなど、ケンブリッジのカルチャーと重なる点が多く、ぜひご支援したいと思いました。
ケンブリッジ 為野 私は大学で国際協力を専攻し、いずれは国際機関やNGOで働きたいと考えていたので、「私が担当するから絶対に受注してほしい!」と全力アピールしました。受注決定後、私が育休明けで、初めてPMを務める案件になることを心配する声もありましたが、「必ず成功させます!」と宣言して担当に選んでもらいました。

#03リソースが限られる中で「育成型・協働型」プロジェクトを選択

画像:公益財団法人 プラン・インターナショナル・ジャパン様

ケンブリッジ 塚本、梅澤、為野

梅澤 為野はやる気満々でしたが(笑)、寄付金主体のNGOは営利企業に比べてバジェットが限定されるため、フルスペックのご支援が難しい状況でした。ただ、ご相談を重ねる中で「プラン主体で推進し、成長したい!」という皆さんの熱い想いを知り、我々にとって新たなチャレンジとなる「育成型・協働型」プロジェクトをご提案しました。


プロジェクトの品質を担保するために、必要なノウハウは全てご提供するものの、ケンブリッジは全てのフェーズにフルアサインせず、プランの皆さんにお任せする範囲を大きく取る。また、塚本などの新人コンサルタントや学生インターンを正式メンバーに組み込むといった方式です。従来もOJTとして彼らをスポット参戦させるケースはありましたが、最初から正式メンバーに組み入れたのは今回が初めて。プランの皆さんの成長をご支援しつつ、ケンブリッジも成長の機会をいただく、という形です。

大谷

コンサルタントに丸投げせず、プロジェクトを「自分事」として捉え、頭や手を一生懸命動かさなければ進まないわけで、成否は私たちの成長にかかっていました。ただ、覚悟はしていたものの、実際に始まると思っていた以上に大変で(笑)。

梅澤 お任せする実作業が多く、大変だったとは思いますが、逆に制約や制限が多かったからこそ、課題を乗り越えるたびに双方の想いが重なり合い、One Teamになることができたと感じています。

#04心から納得できるまで本音の議論を繰り返す

画像:公益財団法人 プラン・インターナショナル・ジャパン様

ケンブリッジのオフィスで行われた集中討議

ケンブリッジ 塚本 「ForCプロジェクト」と名付けられたプロジェクトは2019年10月に始まり、最初はビジョンやゴールを定める「Concept Framing(CF)」に着手しました。変革プロジェクトを「自分事」にしてもらうためには、誰もが納得・共感できるゴールを決めることが極めて重要ですが、キックオフでは「コンセプトやゴールなんて必要なの?」といった声も出ていました。
大谷 プロジェクトの目的は理解していたものの、最初はスタッフごとにやりたいこと、解決したい課題が見事にバラバラで……。ITに明るくないため、どんな作業や工程があるのか、具体的な話を先にしたいと感じたのかもしれません。
為野 そこで、まずプロジェクトメンバーの皆さんには事前に「現状の課題」「プランが進みたい方向性」「自動化すべき業務」など、様々な軸を立てて四象限のマトリクス図を作り、着手したい事象に付箋を貼ってもらい論点を整理しました。

ここでは、集中討議本番前の肩慣らしとして、自分の意思を表明しやすい環境を作るよう意識しました。

その後、ケンブリッジの赤坂オフィスで行った集中討議でメンバーや現場スタッフなど約20名が参加されて、残論点の検討やプロジェクトゴールについて議論しました。

この時は、オフィスにある数メートルの壁が付箋でびっしり埋まるほど白熱しました。


大谷 ケンブリッジが上手に全員の思いを引き出し、スクライブを通じてそれを言語化してくれたので、バラバラだった意見が見事に整理されました。アウトプットに集中できたので次第に本音が出始め、そこから視点や発想が広がっていくような気がして、とても楽しかったです。
塚本 集中討議の前半は楽しい「発散」でしたが、ゴールステートメントを決める後半の「収束」は難航しましたね。
それぞれのスタッフの使命感や思い入れが強いためか、ゴールステートメントが決まらずに終了してしまって・・。

産みの苦しみというか、全員納得できる言葉が見つからず、事務局に持ち帰ってさらに議論しました。

大谷 コアメンバーの安野さんや横山さんと「こういう意味や想いを込めるには、どんな言葉がふさわしい?」などと連日議論しましたが、それでも決まらなくて。集中討議後に行った2回目の追加セッションでようやく決まりました。
為野 とはいえ、徹底的にこだわり抜いたからこそ、最後は全員が「これだ!」と思えるシンプルかつ明確なゴールステートメントができました。
梅澤 どんな言葉でゴールを定めれば、全員が納得するのか、組織全体に浸透するのかは、コンサルタントには分かりません。CFフェーズで本音の議論を行ったことで、皆さんの中にプロジェクトを「自分事」として捉える気持ちが芽生えたように感じました。また、納得できるまで決して手を抜かないという「プランらしさ」が、この頃から良い面で発揮されるようになり、プロジェクトの質を高める原動力になりました。
大谷 初期段階で本音の議論を経験したおかげで、以後のフェーズでも中身の濃い議論ができました。進むたびに大変な作業が増えて前後不覚に陥りそうになりましたが、常に立ち返る原点があったことで不思議と迷いは感じませんでした。

#05徹底的な課題の抽出・分析で意思決定の指標をつくる

塚本 次の「Assessment(現状調査・分析)」フェーズでは、2019年末頃から2カ月ほどかけて現状の業務・システムの内容、課題の洗い出し、改善施策の検討、評価指標や目標値の設定を行いました。「育成型・協働型」ということで、この段階から様々な実作業をプラン側にお任せすることになりました。


まずは梅澤がヒアリングや分析の進め方をレクチャーし、PMやコアメンバー、私や学生インターンが現場スタッフにヒアリングを行い、分析作業を進めました。例えば、リテンション業務はスタッフごとに取り組み方が異なり、仕事の成果となる支援者の支援継続率にも格差があるなど、潜在化していた様々な課題が見える化されていきました。

為野 整理した結果、領域別の課題テーマが23個になり、それぞれに細かい課題がぶら下がっていました。それらに対して一つひとつ掘り下げながら分析し、複数の解決策を考えていきましたが、皆さんには結構な作業負荷がかかっていたはずです。
大谷 途中で心が折れかけました(笑)。

でも、今まで「やる/やらない」「続ける/続けない」の判断基準が曖昧だっただけに、客観的なデータや指標をもとに優先順位を付け、継続・中止を判断できたことは大きな意味がありました。現在進行中のフェーズでも、ここで決めたことが役立っています。

梅澤 「育成型・協働型」プロジェクトでは、全てのフェーズで100点満点の成果を刈り取ることは難しいと思います。それでも、なんとか成果を最大化するべく、妥協をせずに取り組まれていましたね。
大谷 いつかは解決しなければならない課題ばかりで、「これは議論する必要がなかった」と思うものはありませんでした。また、「自走できる組織」を目指す上で、課題の見つけ方や分析方法、解決のアプローチといったケンブリッジのノウハウを獲得できたことは、この先必ず役に立つとも感じました。
とはいえ、この頃最もプロジェクトに影響したのは「新型コロナ」ですね。前提条件としていた業務フローが一変してしまい、段階的に進める予定だったDXを一気に進めなければならなくなりました。


例えば、コロナ禍以前に行った「プラン・スポンサーシップ」に関する議論では、「チャイルドと支援者の交流ツールとして、紙の手触りや直筆であるといった『温もり』が大切なんだ」という意見がありましたが、現在はオンラインメールが9割以上を占めるなど、状況が様変わりしています。

梅澤 ただ、新型コロナがなかったとしても、アセスメントで徹底的な議論や分析を経験したことで、「主観や感情だけでなく、客観的な数値や指標も踏まえて判断し、変える必要があることは変えよう」という意識がプランの中に根づいたことは、プロジェクトを進めていく上で一つの転換点になったように見えています。

#06覚悟を決めて「1人PM体制」に

塚本 次に行った、将来業務やシステム開発方針など全体計画を決める「Business Model(構想策定)」フェーズでは、基幹業務システムの刷新プランが決まらず、3週間ほど議論しました。何度も検討を重ねた結果、システムの全面刷新を一気に行うのは難しいという結論になり、前後半に分けた2段階リリースが決まりました。
大谷 前半の1次フェーズは、①攻め(マーケティング強化/新規支援者獲得)としてCRMツールの導入等に着手する。後半の2次フェーズは、②守り(既存支援者のリテンション向上)に着手する。そして前後半で共通して、③業務システム刷新(非効率業務の排除/①②を支えるための業務システムづくり)に着手するという方式です。今現在(2022年12月)は2次フェーズが始まったところですが、個人的には2段階に分けて良かったと感じています。
おそらく全面刷新に着手していたら、その対応に振り回されて業務が回らなくなっていたはずです。
塚本 続く「Scope(要件定義)」フェーズでは、ToBeで必要になるだろう業務の流れやシステムに求める機能をまずは棚卸しして、RFPに落とし込み、まずは風呂敷を広げ、優先順位をつけてベンダーに伝えられるように準備しました。
為野 IT変革プロジェクトを行う際、ケンブリッジは全体最適の視点で検討するために「ファンクショナリティ・マトリクス(FM)」を作成します。システムに求める機能を網羅した一覧表を作り、重要度やベネフィット等の観点から「作る機能」「次フェーズで作る機能」「作らない機能」等で優先順位付けしていきます。ただ、今回は対象業務がかなり多く、Tobeモデルや機能を書き出すだけでも一苦労でした。
ここでも事前にケンブリッジのレクチャーを受け、プラン主体で進めましたが、頭も手も動かす量があまりにも多く、毎回グッタリしていました(笑)。
為野 それでも「ITに明るくない」と仰っていたプランの皆さんは猛勉強されて、最後はほぼ皆さんの力だけでRFP(提案依頼書)をまとめられたのは驚きでした。
梅澤 システム刷新プロジェクトは、誰ひとりシステムの全容を理解していない状態では始められません。ここまでのフェーズで、活用したいデータの所在やデータの質などを含め、基幹業務システムの全容を深く理解したからこそ、本質的な部分で「やるべきこと」「変えるべきこと」が考えられるようになりました。
大谷 最初は「データが汚いですね」と言われても、ピンとこないくらいでしたね。そこから、安野さん(コアメンバー)のように猛勉強を経ていまやシステムの全容やデータの活用方法を理解する人材が育ったことは、今回のプロジェクトの大きな収穫でした。
塚本 Scopeフェーズの後半では、大谷さんがプロジェクトマネージャー(PM)に専念すると宣言されて、1人PM体制になりました。プロジェクト開始当初から「私はPMに向いてない」とおっしゃっていましたが、何か心境の変化があったのでしょうか?
大谷 所属部署の部長とPMを兼任していましたが、次第に対応が追い付かなくなり、どちらも中途半端になってしまって……。「誰かが代わりにやってくれないかな」と心のどこかに逃げたい気持ちもありましたが、最後は「このプロジェクトは私がやるしかない!」と腹を決めました。
事の成り行き上、私と大谷さんの2人PM体制で始まりましたが、全体最適の視点で考えた時、私は自部署のマインドセット改革に注力したほうがプロジェクトに貢献できると感じていました。
梅澤 ただ、2人PM体制でスタートしなければ、困難ばかりだった初期フェーズを乗り越えられなかったと思います。その後も大谷さんや楠さん、コアメンバーの安野さんや横山さんなど、誰ひとり妥協せずに進んできたからこそ、1人PM体制となってもプロジェクトが回せるようになったと思います。大谷さんは頼もしい存在で、現在もケンブリッジのご支援は続いていますが、もはや最終段階に入ったのかなと感じています。
大谷 1人PM体制になった今、「プロジェクトはモチベーションの維持が大切」ということを痛切に感じています。私が後ろ向きになったら、メンバーの空気も変わる。周りに支えられてばかりですが、気持ちは常に前向きでいたいですね。
梅澤 「自走できる組織」になるためには、方法論を学ぶことも重要ですが、まずはメンバーの心を動かし、変えていくことが一番大切になります。我々はノウハウのご提供はできますが、「絶対にプロジェクトを成功させる!」という覚悟は、皆さん自身に持ってもらうもの。大谷さんの決断があったおかげで、この頃からプロジェクトの推進力がさらに増したように感じました。
塚本 同じScopeフェーズの後半は、「自走できる組織」づくりに向けて、プロジェクトマネジメントやファシリテーションなど、ケンブリッジのノウハウをお伝えする「トレーニング」を毎週行いました。
ケンブリッジから学んだことは、プロジェクトに限らず普段の会議でも役立っています。最初に終了条件やゴールを書き出し、議論をスクライブして、最後は振り返りを行って決定事項やToDoを決めて……。今ではそれらがクセになってしまい、プランの会議だけではなく自宅の自治会でも活用して「とても助かる!」と重宝されています(笑)。
大谷 私もあの時学んだことはフル活用していますが、特に助かったのはベンダーとの要件定義フェーズです。セッションではスクライブするのが習慣化していましたが、ベンダーは議事録を作っていなかったため、後日、開発を進める段階で不明点や課題が頻出した時、スクライブがとても役に立ちました。


私たちが鍛えられたせいか、ケンブリッジに比べるとベンダーの進め方は物足りなくて。実際、開発フェーズはそのしわ寄せでバタバタでした。為野さんがこのフェーズもPMだったらどう対処したかなぁと考えたこともしばしばありましたね。

#07プロジェクト後の変化 ~人が変わり、組織も変わり始めた~

現在は1次フェーズが終了し、2次フェーズに入ったところですが、現場スタッフの反応はいかがでしょうか?
大谷 1次フェーズの初期は、新たな業務やシステムについて現場スタッフに理解してもらうのが大変で、エバンジェリスト役を務めた安野さんも本当に苦労されていました。伝え方も十分に検討を重ね、業務の費用対効果や重要度もファクトで見える化されていたため、理論武装はできましたが、それだけでは現場スタッフに理解してもらえなくて。
為野 プランの方々は「体温」の感じられる活動を大切にされてきただけに、「頭では理解できても、心が追い付かない」状態だったのかもしれません。そこで、皆さんは「これまで大切にしてきた『プランらしさ』の何を残し、どれを切り離すのかを考えよう」と議論されて、心の面までフォローするための「業務改革の方針」を作成されました。
大谷 変革を伴うプロジェクトだけに、捨てなければならない「プランらしさ」もありました。その対価として、どんなメリットがあるのかを具体的に提示できないと、やはり心が追い付かないと思います。そして、その先にはスタッフ全員が求めているゴールがあるわけですが、やはり「果実」が味わえない初期段階で理解してもらうのは難しいですね。
今は少しずつプロジェクトの「果実」を味わってもらえているようです。例えば、1次フェーズで導入したクラウド型のCRMツールは、データ分析・連携の面で使い勝手が良くて作業負担も大幅に減り、コロナ禍以降は在宅勤務が増えたため、コミュニケーションの面でも役立っています。在宅勤務やリモート業務における従来システムの使いづらさは、今回のコロナ禍で誰もが感じたはずで、「システムや業務が変わると不便さが解消され、こう良くなる」というイメージが体感してもらえたと思います。


また、寄付金管理チームの現場からは、プロジェクト前には聞こえてこなかったような「これをやってみよう」「これは変えよう、廃止しよう」といった声が今では積極的に出てくるようになりました。プロジェクトメンバーの働きかけで、他のチームも少しずつ意識が変わり始めています。従来は曖昧だった業務の目的やつながりが、今回のプロジェクトで言語化・見える化されたことも意識変化に影響していると思います。

梅澤 変革プロジェクトを行った後もコンサルタントやベンダー依存が続く、いわゆる「自走できない組織」のままでは、人材が育たず、コストもかさみ続けていきます。スタートから現在に至るまで長くご支援してきた私としては、「本音で議論できるチーム」「自走できる組織」に向けて、組織も人も着実に成長されているなと感じています。
今後の展望についてはいかがでしょうか。
大谷 2次フェーズでは、「新システムで何がやりたいのか」の議論にもっと現場スタッフを巻き込み、組織全体に変革意識を浸透させたいです。そもそも、現場スタッフの働き方を良くするためのプロジェクトですから、「自分たちで変えていく」という意識に働きかけて「自分事」にしてもらいたいと思っています。


CRM導入で効率化された業務も多くあり、今後、CRMツールでマーケティングやリテンションに活用できるデータが蓄積され、それを生かせるようになれば、現場スタッフの意識も一気に変わるはずです。

私は2次フェーズこそ、プロジェクトの「本丸」だと考えています。ゴールステートメントを実現するため、今まで以上に業務の見直しや新システムの啓発に取り組み、有限なリソースを本来やるべき業務に投資していきたいですね。2次フェーズが終わる頃には業務のあり方がガラッと変わり、多くのスタッフにプロジェクトの意義を感じてもらえるはずです。
梅澤 「育成型・協働型」プロジェクトということで、進み方は緩やかに感じられているかもしれません。そうした中でも、プロジェクトを回せる人材が増え、組織に改革の土壌が広がるなど「見えない財産」がたくさん得られていることは、大谷さんや楠さんが誰よりも実感されていると思います。1次フェーズはプロジェクトの恩恵を受ける方々が限られていたため、まさにこれからが「本丸」です。オセロの石を一つひとつ裏返していくように、現場の方々の理解と参画を促していきましょう。


皆さんのますますのご活躍を期待しています。

画像:公益財団法人 プラン・インターナショナル・ジャパン様

――本日は貴重なお話、ありがとうございました。

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