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お客様事例

リコーリース株式会社様

画像:リコーリース株式会社様
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リコーリース株式会社様は『「リース」の先へ』というビジョンの下、さらなる成長や事業領域拡大に貢献する新基幹システム開発および経営改革を進めるにあたり、新たにPMO(Program Management Office)を立ち上げることになり、ファシリテーション型PMOに強みを持つケンブリッジに支援を依頼されました。

このインタビューではケンブリッジの榊巻とともに、PMO立ち上げを主導し、その後の運営を担われてきた野田様、本田様、島添様のご参加を得て、ゼロベースからのPMO立ち上げを成功に至らしめた要因について語っていただきました。

#01情シス部門から始まった「自社初のPMO立ち上げ」

画像:リコーリース株式会社様

BPT本部デジタル革新部長 野田氏

最初に、リコーリース株式会社の概要について教えてください。
野田 当社は1976年、リコー製品の販売支援会社としてスタートし、その後は「リース・割賦事業」「金融サービス事業」を軸とした総合フィナンシャルサービスを展開しています。

現在は2017~2019年度の3カ年中期経営計画で掲げた『「リース」の先へ』というビジョンの下、既存事業の枠組みを超えて新たな提供価値を創造し、環境・社会・お客様の発展に役立つサービス・商品を提供する企業を目指して活動しています。

今回のプロジェクトに至った背景を教えてください。
野田 2015年、当時の社長が新しい基幹システムの構築を全社方針として掲げ、私のいた情報戦略部が開発構想に向けた調査・検討を担うことになりました。

しかし、新しい基幹システムの構築は情シス部門だけで行えるものではなく、全社の経営改革とワンセットで進めていかなければなりません。そこで2016年10月、プロセス改革を担う構造改革推進部と情報戦略部が合体し、BPT(Business Process Transformation)本部が設置されました。同時に、新基幹システム開発構想を進める準備室として「新基幹システム推進室」も同本部内に設けられ、私が室長に任命されました。


そもそも新基幹システム開発は数年かけて進めていくものであり、その中では営業や経営管理など各本部の短・中期プロジェクトが五月雨式に動いていくことになります。

そうなれば会社全体を俯瞰して調整する舵取り役、つまり各プロジェクトの計画実行を支援するPMO(Project Management Office)が必要になりますが、従来、社内にはそうした機能を持つ組織がありませんでした。「PMOを作らなければ収拾がつかなくなり、開発構想も頓挫する」との危機感から、2016年11月、社長に対して「PMOが必要だ」と提案したことがきっかけです。

ケンブリッジを選ばれた理由は?
野田 システム開発に関するプロジェクトマネジメントの経験はあったものの、全社横断的な組織をゼロから立ち上げた経験はなかったため、当初からコンサル会社の支援を得たいと考えていました。実は2015年に新基幹システム開発構想が始まった際、複数のコンサル会社に声を掛けてコンペを行い、その中にケンブリッジもいたのですが、その時は別の会社に決まりました。


しかし、個人的にはプレゼン時の提案内容やテスト的に実施したファシリテーション研修の印象が強烈に残っていて、PMOの立ち上げや運営の経験が豊富だったことも魅力的でした。今回は未経験の取り組みだけに、提案だけで終わる会社ではなく、私たちと一緒に汗をかいて“並走”してくれる会社が良いと考えていたところ、ケンブリッジを思い出したのです。

#02主目的は「プログラムマネジメント機能の強化」

ケンブリッジとの協働は2017年1月から始まりました。
ケンブリッジ 榊巻 今回のご依頼を目的-手段の関係で考えると、頂点となる目的に『「リース」の先へ』というビジョンの実現があり、その手段として長期スパンで進める「新基幹システムの開発」がある。これと並列で全社の事業戦略を含む3カ年中期経営計画があり、その下に各本部が取り組む重点施策がある。こうした階層構造で会社全体を捉えながら、PMOの全体像や機能を検討していきました。

具体的には、キックオフした2017年1月初旬から6月末にかけて、大きく2つのプロジェクトを行いました。1~2月の「PMO機能構築プロジェクト」、そして5~6月の「PMOトライアル運用プロジェクト(3テーマ実行計画見直し&プロジェクトマネジメント強化)」です。

野田 最初のPMO機能構築プロジェクトでは、現状調査、課題と論点の洗い出し、リコーリースが求めるPMO機能や体制、運用スキームの構築などを検討しました。意思決定プロセスや戦略的投資のスキーム、各プロジェクトの品質管理のあり方、ITガバナンスの強化など検討すべきことが山ほどあり、難易度も相当高い。

実は、キックオフする前はBPT本部の中にPMOを置こうと考えていました。しかし、ケンブリッジから「新基幹システム開発やBPR(Business Process Re-engineering=業務プロセスの再構築)は会社全体で進めていく大規模かつ長期のテーマ。それを主導するPMOは役員や各本部への依頼も多く、利害に関係しない立ち位置がいい。PMOは全体を俯瞰できる位置、かつ独立した組織となるべき。また、意思決定を速めるため、トップに近い位置に作ったほうがいい」と提案されました。

榊巻 今回構築するPMO(※)はプロジェクトマネジメントではなく、「プログラムマネジメント」の強化が目的になるという議論をしました。プログラムとは共通のミッションを有するプロジェクトの集合体です。これらを全体最適の視点ですり合わせて整合性を取り、総合的にマネジメントしていくのがPGMO(Program Management Office)の役割です。長期かつ複雑で対象範囲の広い活動を進めていく場合、プログラムマネジメント機能を構築することが大切になります。PMOを設置している企業は多数ありますが、PGMOを設置している企業は限られた大企業が中心です。そういった意味でリコーリースでは、先進的な取り組みとして、PGMOを設置することになったのです。


※実際のリコーリースでの組織名称は「PMO」だが、一般的なProject Management Officeと明確に区別するため、以後「PGMO」と表記

野田 経営層への最終報告では、社長直下に役員・各本部と対等に交渉できるCPO(Chief Program Officer)を置き、その下にPGMOを配置することを提案しました。また、PGMOの機能や運用スキームもプログラムマネジメントの視点で構築し、いずれも承認を得ることができました。

ケンブリッジと並走しながら検討した結果、リコーリースが求めていたPGMOの原型が固まり、経営層との合意形成も進み、2017年4月、正式にPGMOが発足しました。

#03「PGMOトライアル運用プロジェクト」で変革を担う人を育てる

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経営管理本部経営企画部経営管理室 マネージャー 島添氏

2017年5月のGW明けから6月末までは、「PGMOトライアル運用プロジェクト(3テーマ実行計画見直し&プロジェクトマネジメント強化)」に取り組まれています。
榊巻 目的は大きく2つありました。1つは、実際の改革テーマを対象としたトライアルを通じてPGMO運用スキームの「理想と現実のギャップ」を抽出し、より実態に即した内容に改善していくこと。もう1つはPGMO人材の育成です。トライアルを通じてケンブリッジが持つプロジェクトマネジメント、プロジェクトワークのノウハウを提供し、経験値とスキルを高めていこうと考えていました。
本田 私は2017年4月にBPT本部との兼務という形でPGMOにリーダーとして参画し、他にも経営企画、財務、情報戦略部から兼務で1名ずつ参画し、野田、島添を含む6名体制でスタートしました。それ以前は密度の濃いセッションに取り組む様子を横目で見ながら、「PGMOは結構大変そうだな」と思っていましたが、まさか自分がリーダーとしてそこに関わることになるとは思ってもいませんでした。そして、実際に関わってみると、想像どおり、いや想像以上の大変さでした(笑)。

特に私はIT部門出身ではなかったため、プロジェクトマネジメントの基礎がないところからのスタートでした。そのため、「PGMOトライアル運用プロジェクト」ではセッションに付いていくだけでも必死で、頭も体も常にフル回転でした。

このプロジェクトは、2016年度にBPT本部で計画されたものの中から3つの改革テーマを選び、2017年度からの中期経営計画に照らして実行計画を練り直すもので、PGMOやBPT本部のメンバー22名を3チームに振り分け、同時並行で進めました。私自身はPGMOとしてのスキル、プロジェクトワークの経験が不足していたため、これらを本気で学ぶという意味でも良い機会になりました 。

野田 改革テーマについては、後に全社共通のプロジェクト計画書のベースとなる、ケンブリッジ提供の「プロジェクトマネジメント12のフレーム」に当てはめ、見直すべきポイントを洗い出しました。
島添 私のチームでは改革テーマに取り組む目的をメンバーで確認し合ったところ、みな思っていることが少なからず違っていました。しっかり合意形成ができていないと目的不在になってしまうことを実感しました。
榊巻 こうした状況は、ある意味「よくあること」だと思います。大事なのは、曖昧な状況を認知し、的確に是正することであり、これがPGMOの担うべき機能なのです。とは言え、PGMOの機能を担える人材はなかなかいません。そもそも全社横断でプログラムをマネジメントする機能など、普通はないのですから。先進的な取り組みであるからこそ、それを担う人材を育成していくのは難しい。
野田 このプロジェクトでは、「12のフレーム」に当てはめながら見直しポイントを特定し、その後はワークパッケージを作成しながら実行計画の品質を高めるための勘所、1カ月半後に実現していたいゴールを設定し、セッションを重ねていきました。

誰もやったことがないPGMOなのだから、試験的に運用して、実戦から学ぶしかありません。その時にケンブリッジのPGMO運営のノウハウは役に立ちました。ゼロからやるのと、ある程度の下敷きがあるのとでは、速度が違いますから 。

#04ケンブリッジとの協働後

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BPT本部 デジタル革新部 本田氏

2017年6月にケンブリッジとの協働が終了しましたが、その後は?
本田 ケンブリッジと協働した期間は“怒濤”のような日々でしたが(笑)、どうにかそれを乗り越えてPGMOの機能や運用スキームの骨格が固まりました。しかし、実際に運用を開始するにはまだまだ準備しないといけないことが数多くあり、なおかつその時点では私も含め6名のメンバー全員が所属部署との兼任だったため、できることには限りがありました。そこで、次年度に向けてPGMOとしての下地を整えようと考え、メンバーを2チームに分けました。

1つは、各本部の中期経営計画に挙げられている施策やプロジェクトを全体最適の視点で整理し、つなぎ合わせた「全社ロードマップ」を作成するチーム。もう1つは、現状のリソースで果たせるPGMOの機能を再検討し、それを実行する際に必要となるドキュメントやツールを作成する「設計」チームです。

野田 これと並行して、『「リース」の先へ』というビジョンの実現に向け、5年後、10年後の会社のありたい姿(ToBe像)を考える中で、5つのプログラムが生まれます。2018年に入ってからは5つのプログラムの実行計画作りに取り組みました。役員も巻き込みながら議論を重ねつつ計画を固めていき、並行して、プログラムマネジメントの運用ガイドラインや、全社共通のプロジェクト計画書のフォーマットやチェックシートといったドキュメントやツールを作成していきました。

また、個々のプロジェクトの計画を精査する「プロジェクト審議会」を新たに設けました。これは役員クラスではなく、現場レベルの責任者を集め、実務に即した判断として実行可能かどうかを審議するものです。さらに、プロジェクト終了後の効果検証を行う最終報告もこの審議会で行うこととして、その運用スキームも固めていきました。

榊巻 ゼロベースの状態から新組織を立ち上げ、ケンブリッジとの協働後もしっかり“自走”して実働フェーズまでたどり着いた。それだけでもすごいですし、マネジメント組織としての機能もきちんと発揮していますね
本田 ビジョンの実現や新基幹システム開発に向けたToBeが整理され、実行に向けたロードマップがあり、各本部のプロジェクトがそれらに紐付けられている。全社の取り組みが一気通貫でつながっている状態まで整えられたことは、当社としては画期的な出来事だと思います。
野田 組織の機能分化が進んでいるため、何らかのプロジェクトを行おうとすると必ずと言っていいほど複数部門が連携することになります。そうした時に全体像や共有できる目的・ゴールがなければうまく進みませんし、部門間のコミュニケーションをつなぎ合わせるPGMOのような組織も必要になります。例えば、働き方改革というプログラムにおいても、当社には共有できる目的やゴールがあり、ロードマップもあるため、実効性のある改革になっています。PGMOとして島添が関わったことで個別施策が全体感を持って統合され、あとは各本部で運用していくフェーズに移行しています。
榊巻 一つひとつの施策において、全社で歩調を合わせて同じ目的やゴールに向かって進んでいく形になっている。それができている会社はほんの一握りでしょう。社長以下、社員がワンチームになるからこそ、大きな組織を前に進めていくことができるわけです。
最後に感想を。
野田 2019年11月の組織変更で、PGMOは経営企画部の中に移管されました。一般的には経営企画部が担う機能ですから、ある程度PGMOの活動が軌道に乗ったと判断され、落ち着くべき所に落ち着いたわけです。私たちの2年間の取り組みは、ある意味、現在の形に落ち着くまでの“準備室”のようなものだったのかもしれません。会社全体で一体となって様々なプロジェクトを推進させるという意味では、変化のきっかけを創り出し、会社としてのレベルを少し押し上げることができたかなと感じています。
本田 最初に野田さんの掛け声でPGMOという組織が立ち上がっていなければ、現在の状況はなかったと思います。完璧とは言えませんが、組織としてのタテ・ヨコをつなぎ、一体感を持って長期的なミッションに取り組んでいける体制ができ、少しずつですが「みんなで変えていこう」という意識も醸成できている。「PGMOがすごいことをした!」と喧伝するつもりは毛頭ありませんが、会社に対して一定の貢献は果たせたと思いますね。
島添 一方で、PGMOの存在意義がなかなか認知されないのが悩みでした。PGMOは縁の下の力持ちのような仕事が多いため、具体的かつ目に見える成果・効果が示しづらい。成果や効果が見えるとしても5年後、10年後、なかなか難しい組織ですよね。
榊巻 とはいえ、お話を聞く限り、「PGMOのおかげだ」とは認識されずとも、PGMOの活動が少しずつ社内に影響し始めている。これは他社ではなかなか実現できていないことです。

今後はおそらく、PGMOの活動成果が2020年度からの次期中期経営計画に貢献し、ひいては会社の持続的な成長を推進していくことになる。そう考えれば、経営に与えたインパクトは大きいですね。PGMOはプログラムやプロジェクトをマネジメントするだけの組織ではなく、会社の進むべき方向性を導き出し、それを社内に周知して全員の目線を揃え、「そこに向かってやっていこう」という意識を醸成していく機能を担っている。今後、皆さんの取り組みが浸透し、会社がより良い方向に進んでいけば、PGMOが果たしてきた役割への理解も広がっていくことでしょう。立ち上げに関わった者として、今後のみなさんのご活躍を期待しています。

本日は貴重なお話、ありがとうございました。

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