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お客様事例

日軽パネルシステム株式会社様

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日軽パネルシステム株式会社(以下、日軽パネル)は「断熱パネル」の開発・製造・設計・施工を一貫して手がける、日本軽金属グループの企業です。ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ(以下、ケンブリッジ)は2021年から2023年まで同社の業務改革を支援しました。

日軽パネルの業務改革はシステム導入を伴わない取り組みであるため、現場との対話や改革のリテンションにさまざまな工夫をこらしながら、ケンブリッジの支援が終了したあとも改革を推進中です(インタビュー実施日:2025年12月25日)。

本インタビューでは、営業部門と工事部門の改革をケンブリッジとともに推進した鳥居泰氏、岩下一朗氏に当時を振り返ってもらうとともに、現在の改革を管掌する取締役である前澤健二氏も交えて、日軽パネルにおける業務改革の「今とこの先」をお話しいただきます。また、ケンブリッジのプロジェクトマネージャーである小泉健人もインタビューに参加しました。

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左から(所属はインタビュー当時のものです)
鳥居 泰 様(Nikkei Panel System Vietnam Co.,Ltd. General Director)
前澤 健二 様(取締役 エンジニアリング統括部 部長)
岩下 一朗 様(施工技術部 支店運営サポートグループ グループ長)

 

#01営業がなんでも引き受ける文化を変えたい

『業務改革の教科書』を手にプロジェクト開始当時を振り返る鳥居氏

鳥居さんがそもそも「営業をなんとかしたい」と思われたきっかけを教えてください。
鳥居 2020年ごろ、私は営業統括グループに所属しており、全国の営業の様子を俯瞰的に見られる立場にいました。自分自身も過去に4〜5年ほど営業を経験していたこともあり、弊社の営業部門には大きな課題がある、と気づきました。
どのような課題でしょうか。
鳥居 一言で言えば「営業がなんでも引き受けてしまう文化」が根強い、ということです。

弊社は、内装建材の一種である断熱パネルを開発・製造するだけでなく、断熱パネルを使った空間を施工するところまでをワンストップで提供しています。営業の本来の役割は商業施設や工場の施工案件の引き合い対応から受注までのはずなのに、後続タスクである資材の手配、工事段取りの打合せ、現場の立ち会い、売上計上、さらにはクレーム対応まで、とにかく営業が業務プロセス全てに関わっている状況でした。

本来は設計部門や工事部門に任せるべき判断や調整まで営業部門が引き受けていたのですね。
鳥居 そうです。その結果、営業は常に疲弊していて、「また営業か」「また俺たちか」という意識も強くなっていました。「これは個人のがんばりで解決できる話ではない。仕組みからなんとかしなければ」という思いを強く持ちました。

ちょうどそのころ業務改革推進室が立ち上がり、その室長を担うことになり、本格的に営業部門の業務改革をリードすることになったのです。

その過程でケンブリッジにご相談いただきました。
鳥居 仕事人生のなかで業務改革だけに集中して取り組んだことがなかったので、何から手をつければいいのかわかりませんでした。まずは書店に行って、業務改革や業務改善に関する本を何冊か読みました。

その中でケンブリッジの『業務改革の教科書』が、我々の持つ課題意識を整理し、改革の道筋を引くのに最も有用であると感じました。例えば、付加価値マトリクス(95頁)を参考に、自分たちで「営業にとって付加価値の高い仕事はなにか」を切り分けてみたりしました。

そこから「著者に話を聞いてみよう」となったのですね。
鳥居 本には多くのヒントが書かれているとはいえ、自社の業務改革に落とし込むには試行錯誤が必要で、時間も労力もかかります。この本を書いた人たちはこれまで業務改革を数多くやってきたわけだから、落とし込み方を相談すればいい、と思いました。

#02営業が生き生きと働ける仕組みをつくる

最初の取組みが「プロジェクトのゴール設定」でした。
ケンブリッジ 小泉 実は提案の段階から、プロジェクトのゴール設定についてはかなり議論しました。というのは、相談をいただいた段階ですでに鳥居さんたちのやりたいことが多岐にわたっていたのです。プロジェクトの進め方や期間を決めるためにも、最も達成したいゴールはなにか、を早く見極める必要がありました。
鳥居 営業の疲弊感をなんとかしたい、属人化を排除してチームで業務を回せるようにしたい、業務効率化でコストダウンを図りたい、SFA(営業管理システム)で営業の動きを見える化したい、などいろいろな想いをお伝えするなかで「結局、本質的なゴールはなんですかね?」と問われました。
ケンブリッジ 小泉 そこから議論を重ねて、プロジェクトが始まるころには「先発完投型の営業スタイルから脱却し、個々の営業が生き生きと働ける仕組みを作るのがゴールだ」という共通認識ができていました。
鳥居 議論の中で徐々に「これ以上、営業を縛ってどうするんだろう」という感覚が芽生えてきました。当時の営業はすでに相当無理をしていましたので、管理を強化しても疲弊感が増すだけではないか、と。いちばん大事なのは、彼らが生き生きと働ける仕組みだ、と気づきました。
ケンブリッジ 小泉 このゴールを達成するために「営業の役割をどこまでにすべきか」「付加価値の高い仕事は何か」など営業の根幹に関わる部分をまず議論しよう、SFAはいったん脇に置いておこう、といった大方針が決まりました。
いよいよ営業改革の中身の議論に踏み込んでいくわけですね。印象に残っているエピソードを教えてください。
ケンブリッジ 小泉 営業プロセスの屋台骨ともいうべき「商談ステージ」をどう再定義するか、をかなり深く議論しました。
鳥居 もともと商談ステージの考え方自体はありました。しかし、営業担当者によってステージ遷移の判断がまちまちでしたし、各ステージでやるべきタスクをきちんとこなす者とそうでない者がいました。

これでは営業の役割を規定することはできませんので、10名くらいの営業メンバーと議論しながら、納得感のある落としどころを探っていきました。

ケンブリッジ 小泉 例えば、既存大口顧客についてはステージ遷移や受注確度の考え方を新規顧客と分ける、設計部門や工事部門を巻き込むタイミングを整理する、など現場が「これなら戸惑わずに商談を進められる」と思えるものにブラッシュアップしました。

移行コストをなるべく減らしたかったので、元の商談ステージの分け方を踏襲しつつ粗い部分に絞ってさらに分割する、など試行錯誤しました

他に印象に残っているエピソードはありますか?
鳥居 営業の役職に合わせた期待役割の定義ですね。個々人としては優秀な営業であっても管理職として営業チームを率いるのに長けているか、というと必ずしもそうではない。管理職、外勤営業、内勤営業など、それぞれに期待する役割があります。

こうした役割の青写真をある程度プロジェクトで作り、それを各支店に持ち込んでメンバーと議論して、バイネームで役割を決めていきました。本社主導で画一的なものを作って全国の支店に「これでやって」と通達するだけでは支店は動いてくれません。各支店の人員配置にあった形に役割を落とし込むべき、と考えました。

ケンブリッジ 小泉 役割の青写真を作るにあたっては、社内にいらっしゃるハイパフォーマーのみなさんの作成したドキュメントや「こういうとき、自分はこう動く」といったコメントを取りまとめて資料化しました。ハイパフォーマーを量産することはできませんが、みなさんの動きを言語化して組織の役割に分解していくことはできます。
鳥居 商談ステージ、期待役割、営業の本来業務、設計部門や工事部門とのすみわけなど、さまざまなことを議論しましたが、すべてつながっているな、と感じました。実際、行ったり来たりしながら検討しましたし、これらが総体的に納得いく形に落ち着いて、ようやく営業マニュアルに落とし込まれていくんですよね。

#03現場管理マニュアルを携えて全国支店を行脚した

岩下氏が工事領域の改革を現場へ浸透させる際に作成した全体計画

改革の範囲が営業領域から工事領域へと広がっていきました。
鳥居 営業の活動時間を調査したところ、営業が工事の現場に関与する時間が大きな割合を占めていることがわかりました。「現場で困りごとやクレームが発生したら営業に対応してもらおう」というケースが多かったのです。

営業が本来の役割に専念するためには、後工程である工事部門の責任範囲や役割を再定義し、彼らに工事の現場をリードしてもらう必要がありました。

岩下 工事の現場は同じものがひとつとなく、毎回、安全管理に気を配りながら、顧客や施工業者などさまざまな外部関係者と接しなければなりません。個々のメンバーのその場の判断や頑張りに任せてしまうケースが多く、組織としてじっくり時間をとって知見蓄積や人財育成に取り組む機会を作ることがなかなかできない状態でした。その結果、現場のメンバーで対応できない事態が発生すると、現場経験の豊富な営業部門にどうしても頼らざるを得ない、という悪循環に陥っていました。
前澤 会社としても、大型案件の受注が増えてきており、施工技術の高度化に対応できる専門人財の育成を含めた工事機能のテコ入れが急務となっていました。
岩下 これらの状況があいまって、工事領域に関しても、営業と同じように改革のメスを入れよう、となりました。そして「工事に関わるメンバーが専門家として持続的に施工案件をリードしていくには、どのような姿を目指すべきか」から議論したのです。
ケンブリッジ 小泉 議論を重ねた結果、目指す姿を「任せられる技術者集団」とし、そのために果たすべき役割を「案件の司令塔」「工事現場の知見で最適な提案」「施工業者と共存共栄」「安全・安心・快適」の4つとしました。
岩下 工事の現場に長年携わっていたので「これは組織として本当に実現しなければならない」と強く感じました。中でも「施工業者と共存共栄」は、自分自身は常に意識して取り組んでいたことでもあったので、役割にきちんと明記されて非常に嬉しかったのを覚えています。
鳥居 「案件の司令塔」というのは、これまで営業が担っていた現場のリードを工事部門に移管するんだ、という強い意志の表れですね。
ケンブリッジ 小泉 これらを実現できるよう、体制構築、業務見直し、事務作業効率化、風土改革の4つの観点で施策を進めました。
かなり多岐にわたる取組みですね。どのあたりで改革の手応えを感じましたか?
岩下 試行錯誤しながら作った現場管理マニュアルの素案を携えて、全国の支店を行脚し「これから工事部門はこうやっていきます」と宣言していったあたりですね。「岩下さん、どこまで本気なの?」などと言われたりもしましたが、目指す姿や果たすべき役割といった大上段もマニュアルの冒頭にきちんと盛り込み、それらも含めて説明を続けているうちに、徐々に理解者が増えていった印象があります。
前澤 当時の支店では、課長職が設計と工事の管理を兼務するなど工事領域単体での組織運営が必ずしもできているとは言えない状態でした。この改革で、各支店に専任の工事課を作ったり、それらを統括する施工技術部を本社に新設するなど、工事部門全体で組織役割を明確に定義しました。こうした構造的な見直しも、工事機能テコ入れの本気度醸成につながったと思います。
マニュアルを拝見すると「ファシリテーション」「イエローフラッグ」などケンブリッジらしい用語が書かれていました。「この会議は工事課長がファシリテートしてください」と明記されていて驚きました。
岩下 ケンブリッジと二人三脚でマニュアルを作りました。「業務をこう変えたいんだ」というこちらの想いをていねいに汲んでいただき言語化してもらえただけでなく、チームビルディングに有効な会議やコミュニケーションの作法をマニュアルに盛り込めたのは、組織改革を進めるうえで効果的でした。
鳥居 業務改革の進め方はもちろん、チームでの仕事の進め方や信頼関係の築き方を教わることができたのは大きかったですね。

#04業務改革を持続させるコツと次の展望

経営と現場それぞれの立場から今後の改革を語る前澤氏(右)と岩下氏

我々の支援は2023年に終了しました。その後の取組みや成果について教えてください。
岩下 2025年現在も現場管理マニュアルを更新し続けています。役割や業務は常に変わっていくものですし、関連業法の改正にも対応しなければなりません。また、マニュアルには施工技術部や各支店工事課の役割をバイネームで明記していますので、メンバーの入れ替え等も反映しなければなりません。しかし、これがあることによって、「あの支店はこの役割を担うメンバーが足りていない」「こういうことで困っているのだが誰に相談すればよいか」といった現場のリアルな問題にも素早く対処できます。

マニュアルは工事部門に配属される社員の教育にも使われるため、みな最初から部門の意義目的を理解した状態で仕事を始めます。組織としての好循環も生まれていると感じます。

前澤 この改革を通じて「営業が施工案件全体をなんとかカバーする状況から脱却し、各組織がそれぞれの果たすべき責任をきちんと果たさなければならないんだ」という認識が、社内で高まったと感じます。
鳥居 現在も業務改革推進室が改革の進捗状況を把握しながら、改革メンバーに組織横断的なコミュニケーションを促すためのハブになっています。各組織が自律的に改革活動を継続することも大切ですが、業務改革推進室のような第三者組織が、各々の取組みを報告しあったり他組織へ意見を述べたりするような場を設け続けることで、改革のリテンションに寄与していると考えます。
今後に向けて、いまどのようなことを考えていらっしゃいますか?
岩下 これまでは、現場へ業務改革を浸透させる立場で主に活動を続けていましたが、これからは、現場から「こういうふうに業務改革したい」という声がもっと上がってくるようにしていきたいと考えます。会社としてさらに業務を改革していこう、という機運が高まっているので、工事部門全体で風土醸成も含めてそこに呼応していけるように取組みたいです。
鳥居 ケンブリッジと改革に取り組んでいる間ずっとモヤモヤしていたのは、改革の成果をどうやって経営者に示していこうか、ということでした。我々の改革は、システム導入のように目に見える変化を伴うものではなく、ある種「体質改善」のような息の長い取組みでしたので、「それは費用対効果が見込めるのか」「何年でどういう成果を生むのか」と問われると正直答えづらいなと感じる部分もありました。

そんな中でも、「どうすれば組織や会社はもっとよくなるのか」を自問し正解らしきものを探しながら改革を推進したメンバーがここまで4年かけて当初プロジェクトで掲げたゴールにめどをつけてくれました。ここからは、今だからこそ考えられる、経営者に成果を示せる新たな改革を、ケンブリッジと進めた方法論をなぞりながら取組みたいと考えます。

前澤 今回の改革で各組織の役割や業務が大幅に見直され、組織基盤が今まで以上に強固になりました。今後は、会社の戦略や中期経営計画を見据えながら、社内的に納得感のある数値目標を掲げた改革を組織横断的に考えていくフェーズに入っていくべき、と考えています。
システム導入を伴わない業務改革は成果が出るのに時間がかかるし取組みの手綱を緩めてはならない、ということを改めて実感しました。そんな中で、みなさんが長年取り組んできた改革が一段落し、これから新たなステージに入っていくんだということがよくわかりました。ありがとうございました。

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