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お客様事例

【座談会】経済産業省様、ファミリーマート様、三菱UFJインフォメーションテクノロジー様

変革推進人材(ビジネスアーキテクト)をテーマに、モデレーターと3名のゲストが登壇した4者対談セミナーの登壇者集合写真
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【座談会 】変革推進人材の育成事例、これからのビジネスアーキテクト

DX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進するには、実は”X”の部分を担う人材が不可欠だ――。

近年このような認識が官民問わず広がっています。

具体的には、システムと業務を俯瞰し全体最適であるべき姿を描く人材を指しますが、多くの企業から「そのような人物は社内にいない」「育て方が分からない」という声を耳にします。

2025年11月に開催された座談会「【経産省とDX先進企業が語る】変革推進人材の育成事例、これからのビジネスアーキテクト」では、経済産業省(以下、経産省)、株式会社ファミリーマート(以下、ファミリーマート)、三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社(以下、MUIT)より、この領域の第一人者をゲストに迎えました。

本座談会では、変革推進人材に求められるスキルと具体的な育成事例、そして国が描く新たな人材像について、官民それぞれの視点を交えながら語ってもらいました。

第1部では各登壇者が「なぜ変革推進人材の必要性にたどり着いたのか」、その背景にあるリアルな課題を掘り下げます。モデレーターは、榊巻亮(ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ、以下ケンブリッジ)が務めました。



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左から(所属はセミナー当時のものです)
高橋 一興氏(三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社 代表取締役社長)
大石 卓也氏(株式会社ファミリーマート 人財開発部部長)
山本 光彦氏(経済産業省 調査官)

#01DXの「D」ではなく「X」こそが本質だ、と全員が口を揃える理由

変革推進人材をテーマに、モデレーターと3名のゲストがマイクを手に、意見を交わしながら活発に議論を進める対談セミナーの様子

変革推進人材の必要性について議論が盛り上がる皆さん

DXという言葉が流行した2010年代から2020年初頭にかけて「DX人材育成=デジタルスキルの習得」という認識が主流でした。つまりDXの「D」の部分に焦点を当てた育成に注力していました。しかしいまや、官民を問わず立場が異なる皆さんが一様に「必要なのはDではなくX、変革を推進する力だ」と語っています。

なぜデジタルスキルだけでは不十分なのか。皆さんが直面した壁や背景から掘り下げます。まず、MUITではどのような背景があったのですか。

MUIT高橋 私たちMUITは、株式会社三菱UFJ銀行およびグループのシステム実務を担っています。
原点にあるのは、過去に大型案件が難航した苦い経験です。難航の原因を分析した結果、原因はシステムを開発する下流工程における技術力不足ではなく、もっと手前の上流工程の検討不足だと分かりました。具体的には「業務をどう変えるか」が曖昧なまま開発に進み、仕様変更が多発していたのです。
システムを作る以前に、「業務変革」が必要だったんですね。
MUIT高橋 おっしゃる通りです。そのためには、システム開発のスキルに加えて、変革推進スキルを持つ人材が必要だと気づきました。
ファミリーマートの場合はいかがですか。
ファミリー マート大石 私たちの部門は人材育成を担っています。変革推進人材の必要性に気づいたきっかけは、データアナリストの育成で直面した壁でした。
当初は「コンビニエンスストア事業で蓄積したデータをいままで以上に全社目線で活用しよう」という経営方針のもと、pythonなどを活用したデータ分析手法を習得する研修を行い、受講修了者に各部門でデータ分析を担ってもらうことにしました。
しかし、いざデータを分析しようとすると、部門によってデータの形式や貯め方がさまざまで、全社的にデータ活用するには、業務やシステムを変革する必要があったのです。
研修現場の課題感から変革推進の必要性を見出されたのですね。

一方、経産省はこれまでデジタルスキル標準の策定やデジタル人材育成プラットフォーム『マナビDX』の公開などを通じて日本のIT技術力向上の底上げに注力してこられましたが、なぜ今「変革推進人材」に注目されているのでしょうか。

経産省山本 経産省では長年「変革を企業内でいかに起こすか」を調査・研究し政策に活かしてきましたが、近年のDX実態調査で、各企業が実施するDXが必ずしも変革に結びついていない、という実情が明らかになったからです。
かつては基幹システム刷新など、専門人材が分業して長い期間をかけて比較的規模の大きい仕組みを作ることが主流であり、システム導入そのものが企業変革に大きく影響していました。そのため、経産省としては情報システム部門やITベンダーに所属する技術者の育成に政策の重点を置いていました。
しかし不確実性の高い現代においては、現場の課題を深く理解し、最新技術を組み合わせてスピーディーに変革を完遂する必要があり、それらをトータルで推進する人材の必要性が増した、と考えています。
経産省の視点について、企業側はどう感じますか。
MUIT高橋 非常に共感します。案件が難航する背景には「業務の複雑化」と「システムがカバーする業務範囲の拡大」があります。特に金融業では企業横断型のシステムを構築することが少なくなく、業務部門、システム部門のどちらか一方だけでは、あるべき業務プロセスを描くことが難しい時代です。
今求められているのは、業務とシステムの両面を理解し、その間をつなぐ「橋渡し役」なのだと思います。
ファミリー マート大石 当社でも、「システムだから」とシステム部門に丸投げせず、事業部門のメンバーがデジタル知識を身につけ「自社の業務にどう活用するか」を構想できる状態にすることが重要だと、ことあるごとに伝えています。
経産省はDX実態調査の結果から、ファミリーマートは研修現場から、MUITはプロジェクト現場から。異なる道を経て、全員が「変革推進人材が必要」という同じ結論に至ったのは興味深いですね。

ケンブリッジも多くの企業をご支援する中で、「変革を推進できる人材がいない」という切実な声を耳にします。現場で感じていた課題が、こうして皆さまの実体験で裏付けられることは、多くの企業にとって強力な後押しになるはずです。

#02まるで「スーパーマン」? ~変革推進人材に必要な3つのスキル~

変革推進人材に必要なスキルを「デジタル知識」と「変革の4層スキル」に整理し、データ活用やテクノロジー、PJマネジメント、ビジネス基礎力などの要素を図解で示したスキル定義のスライド

ケンブリッジが考える、変革推進人材に必要なスキル

変革推進人材が必要という認識は一致しました。では、具体的にどのようなスキルを持っていれば、変革推進人材として活躍できるのでしょうか。ここからは、その具体的なスキルについて深掘りします。まずは国の視点から、いかがでしょうか。
経産省山本 変革とは「ビジネスモデルやプロセスを変えること」ですので、業務知識がもちろん必要です。その上で不可欠なのが、コミュニケーション力や調整力といった「ソフトスキル」です。経営層と現場の間に立ち、利害関係を調整しながらプロジェクトを前に進める「立ち回り力」が必要だと考えます。
事業会社の視点からはどんなスキルが必要だと考えますか。
ファミリー マート大石 業務知識とソフトスキルは同感です。ソフトスキルの中でも「問題解決力」と「リーダーシップ」は欠かせません。リーダーシップは、チームをぐいぐい引っ張るだけではなく、自分の意見をぶつけながら周囲の意見を引き出し合意形成を図る力が重要だと思っています。
ケンブリッジが提供する研修でも、「自分の考えはいいから、分析や施策の正解を教えてほしい」という受講者さんが一定数いらっしゃいます。しかし 必要なのは「変革者としての信念」だと私は思っています。「うちの会社をこう変えるべきだ。なぜならば――」と、自分の考えを語れるか。これが一つのリーダーシップの形だと考えています。
ファミリー マート大石 おっしゃる通りです。そうしたマインドは、座学だけでは身につきません。実体験を通じて、自分ごととして思考するプロセスを経て初めて醸成されるものだと考えています。
システム開発のプロであるMUITの視点からはどう見えていますか。
MUIT高橋 プロジェクト推進のノウハウを知っているだけでなく「いまどこまで具体的に進めるべきか」を肌感覚で判断するスキルが必要ではないでしょうか。例えば現状調査では「今、どこまで深く調査すべきか、どれだけのリソースを投下すべきか」という判断が後工程に深く影響します。肌感覚のある人材は「ここは徹底的にやるべきだ」「ここは概要でいい」と的確に濃淡をつけられますが、そうでなければ「この段階でそこまでやる必要があるのか?」と躊躇して、動けなくなってしまいます。
「調査します」という言葉一つでも、「どのレベルで、何を、何のために調査し、後工程にどう接続するのか」まで語れなければ、周囲の協力は得られませんね。
MUIT高橋 その通りです。この「肌感覚」を掴むのは容易ではありませんが、変革推進には欠かせない能力だと思います。
まとめると、まずは「業務知識」。 そして「変革スキル」――ここには、コミュニケーション力や調整力、問題解決力、リーダーシップといった「ソフトスキル」が含まれます。さらに、周囲を牽引するための「肌感覚」も必要になりますね。
経産省山本 こうして要件を並べていくと、まるでスーパーマンのようですね(笑)

しかし、必要なスキルを明確にしない限り、育成は進まないと再確認できました。

ケンブリッジでは、変革推進人材に必要なスキルを「D:デジタル知識」と「X:変革の4層スキル」に分けて定義し、育成しています。 変革の4層スキルの土台となるのは、思考力やマインドセットなどのソフトスキルです。その上に、調査手法などの変革方法論があり、それらを使いこなすためのプロジェクトマネジメントが最上位に来ます。

一般的には、分かりやすいプロジェクトマネジメントから教えがちですが、土台となるソフトスキルから積み上げる方が効果的では、と考えています。

MUIT高橋 なるほど。議論してきた3つのスキルが網羅されていて、非常に腹落ちします。実際、私たちも最近はソフトスキルの育成に注力しており、現場の変化に手ごたえを感じています。業務側の要望に対して「目的は何ですか?」と背景を問いかけ、「それなら、こういう方法はどうでしょう?」と代替案を提示するなど、プロジェクトを主体的に推進できるようになっています。
経産省山本 こうして体系化して企業において戦略的に育成すれば、変革推進人材を増やしていけそうだ、と思えてきました。

#03「研修」と「実務」の境界をなくす――ファミリーマートの実践型プログラム

株式会社ファミリーマートにおけるDX人材育成プログラムを示した資料で、初級・中級・上級のレベル別に、求める人材像とDXリテラシー教育、研修、プロジェクト経験などの育成施策を整理している

株式会社ファミリーマートでは、DX人財を初級から上級へと段階的に育成

第一部では、変革推進人材の必要性と、求められるスキルセットについて議論しました。第2部では、変革推進人材育成の具体的な仕組みを各社に紹介いただきます。
ファミリー マート大石 当社では経産省のデジタルスキル標準をベースに、変革推進人材の育成プログラムを初級、中級、上級の3段階で設計しました。

初級プログラムは全社員が対象で、デジタルリテラシーの習得と「自分が変革を起こすんだ」というマインドセットの醸成を目指します。修了者に対してアセスメントを実施し、ビジネスアーキテクトとして適性がある人材に、中級プログラムへステップアップしてもらいます。

中級プログラムでは、ビジネスアーキテクトに必要な基礎知識を習得します。デジタルスキルだけでなく、論理的思考や問題解決力などのソフトスキルも強化します。

上級プログラムでは、中級プログラム修了者の選抜者が、より専門的な3つの研修(DXプロジェクトマネジメント研修、データ活用研修、IT専門人財研修)を通して、実務に直結するスキルを磨きます。

中級、上級研修に進む人材は、どのような基準で選抜しているのでしょうか。
ファミリー マート大石 役職にとらわれず、適性と意欲のある人材を抜擢しています。当初は課長職以上を想定していましたが、アセスメントを実施した結果、スキルの高さと役職は必ずしも比例しないことが分かり、現在は一般職にも門戸を広げています。
上級研修の具体的な中身と工夫を教えてください。
ファミリー マート大石 最大のこだわりは、研修と業務を切り離さず、学びを実務に組み込んでいる点です。例えば、DXプロジェクトマネジメント研修では、実際にチームを組んで社内の業務改善プランを企画します。研修の最後は経営層へプレゼンし、優れた提案はそのまま実際のプロジェクトとして立ち上げ、推進する仕組みにしています。
練習ではなく、本番のプロジェクトにしてしまうわけですね。
ファミリー マート大石 そうです。データ活用研修も同様です。PythonやGASなどを学び、自部署の課題解決ツールを作成します。上司に改善提案を行い、研修後もそのツールを活用することで、「自ら業務を改善し、生産性を向上させた」という成功体験を作ります。IT専門人材研修では、事業部の社員にシステム部門へ異動してもらい、1年間のOJTを通して要件定義スキルを習得します。
1年間の異動ですか。もはや研修というより実務そのものですね。
ファミリー マート大石 研修を単なる「学習のイベント」にしてしまうと、受講者は本気になれず、現場に戻った後に学びが風化してしまいます。だからこそ、プログラムの中に実務を組み込む設計にこだわっています。
現場に戻った後の話が出ましたが、ファミリーマートの研修では上司の巻き込みもかなり意識されていますよね。
ファミリー マート大石 はい。受講者が研修で学んだことを活かして「業務を変えよう」と意気込んでも、周囲の理解や賛同がなければ孤立してしまいます。 そうならないための鍵を握るのが、上司です。研修前に説明会を実施し目的やゴールを伝え、「研修後に部下にどのような業務を任せるべきか」まですり合わせています。
研修と実務を一体化させ、さらに上司を巻き込んで孤立を防ぐ。学びを確実に成果につなげるための、考え抜かれた設計ですね。 

#04研修の学びを「溶かさない」――MUITの全社をあげた育成アプローチ

MUITにおける変革人材育成の取り組みを示した資料で、大規模業務変革プロジェクトでの経験蓄積を起点に、育成プログラムの開発と展開、さらに対象拡大と高度化へと進める流れを3段階で整理している

三菱UFJインフォメーションテクノロジー株式会社における、変革推進人材育成の全体像

MUIT高橋 MUITからは、難易度の高いDXを推進できる人材の育て方についてお話しします。まず、過去に難しいプロジェクトを成功させた人材を分析し、その人材にどんなスキルが備わっているのか、を言語化してみました。見えてきたのは、業務変革を進める理論を知っていることと、関係者をリードするソフトスキルがあることです。そこで、この2つを兼ね備えた人材を育成することにしました。
何から着手されたのでしょうか。 
MUIT高橋 まず、業務変革やソフトスキルに関するさまざまな書籍や文献を読み進め、自分たちなりの理論の形式知化に取り組みました。上流工程の進め方については、ケンブリッジの書籍(「システムを作らせる技術」「反常識の業務改革ドキュメント」)を大いに参考にしました。
「型」をまず言語化したわけですね。その後、どうやってそれを定着させたのですか。 
MUIT高橋 ここが悩みどころでした。育成には経験が不可欠ですが、都合よく難易度の高い大規模案件が転がっているわけではありません。そこで、過去の社内事例をケーススタディにして、プロジェクト上流工程の一連の流れと難所を疑似体験できる研修「超上流道場」を立ち上げました。
高橋社長自らが講師となり、道場を運営されたと聞きました。
MUIT高橋 はい、全10回、各回3時間のみっちりとした構成にしました。前半で理論を学び、後半では「プロジェクトが炎上しかけている」「部門間で意見が対立している」といった生々しい場面設定の中で、どう振る舞うべきかを議論・実演してもらいます。
まさに徹底訓練の場ですね。入門できるのはどのような方ですか。
MUIT高橋 システム部門からは、過去のプロジェクト経験や役割をみて人選しています。業務部門の場合、システム開発の経験者は限られるため、今後大規模な案件に取り組む予定があるか、重要な事業テーマを担う予定があるかを重視して選抜しています。
非常に本気度の高い取り組みですね。運営上の課題はありましたか。
MUIT高橋 手ごたえはあったものの、私たちが直接教えられる回数には限界がある、というのが致命的でした。ノウハウを持った人が部署に数人いるだけでは、知見が組織に浸透する前に「溶けて」しまいます。
「学びが溶ける」というのは、非常にリアルな表現ですね。
MUIT高橋 ええ。そんな時に、ケンブリッジが研修サービスを開始したと聞き、現在は外部の力を借りながらスケールさせています。今後は、外部研修で「型」を定着させつつ、社内研修で「自社特有の難易度の高い案件」を疑似体験する。この両輪で、人材育成に取り組んでいきたいです。
2社の事例を聞いて、経産省としてはどう感じましたか。
経産省山本 「座学だけでなく実践が不可欠」という点が共通していると感じました。ファミリーマートは「実案件」を研修に組み込むことで、MUITは「高度な疑似体験」を用意することで、現場と研修のギャップを埋めています。多くの日本企業が「実践させる場がない」という悩みを抱えていますが、この2社のアプローチは解決策のモデルになると感じました。

#05DXを成功に導くには、戦略と現場の「つなぎ役」が不可欠

経済産業省の資料で、ビジネスアーキテクトの種類を新規事業開発、既存事業の高度化、社内業務の高度化・効率化に分類し、それぞれに求められる知識、実践力、テクノロジー理解などの必要スキルを整理して示している

現行のデジタルスキル標準におけるビジネスアーキテクトの種類と必要なスキル(2025年11月時点)

ここまで、企業には変革推進人材が必要であり、それをどう育成するかを議論してきました。

国も同様の問題意識を持ち、その人材を「ビジネスアーキテクト」と定義して育成を推し進めています。まず、ビジネスアーキテクトとはどんな人物か教えてください。

経産省山本 私たちは、DXの推進に必要な人材像を「デジタルスキル標準」にまとめています。その中核となる存在がビジネスアーキテクトです。経営戦略と現場をつなぎ、変革を実行に移す役割が企業には欠かせません。しかし、従来の定義には課題もありました。
どのような課題でしょうか。
経産省山本 一言で言えば、異なる役割が一つに混在していたのです。

従来のビジネスアーキテクトは、新規事業開発、既存事業の高度化、社内業務の高度化・効率化という3つの役割をすべてひとまとめに定義していました。このカバー範囲の広さから、目的のために何でもやるスーパーマンのようになり、企業からは「どう育てればいいか分からない」という声が寄せられていました。

#06ビジネスアーキテクトはどう変わるのか?解像度を上げた3つの役割

経済産業省の資料で、デジタル人材を巡る課題と強化の必要性を示し、DX推進に向けて求められるビジネスアーキテクト、プロジェクトマネージャーなどの人材像と、スキル習得や育成の考え方を整理している

これからのビジネスアーキテクト像(3つの役割に分かれていく)

「どう育てればいいかわからない」という課題感解消のために、2025年6月に「ビジネスアーキテクチャ人材の育成に関するタスクフォース」を立ち上げたのですよね
経産省山本 はい。民間企業の有識者やIPA(情報処理推進機構)と共に検討を進めてきました。榊巻さんにもメンバーに入ってもらいました。結論として、ビジネスアーキテクトという大括りに定義していた役割を、より解像度を上げて3つの役割に再整理する予定です。

ひとつめの役割は「ビジネスアーキテクト」です。経営戦略を分解し、組織・業務・データ・システムを一貫した構造(アーキテクチャ)に落とし込む人材です。何を変えるべきか、どこから着手するかを設計することに責任を持ちます。次に「ビジネスアナリスト」です。定義されたアーキテクチャをもとに、具体的な業務プロセス改革や要件定義を担う人材です。事業側の要求を言語化し、全体の合意形成を進める役割です。最後に「プロダクトマネージャーです。定義されたアーキテクチャをもとに、製品やサービスを一気通貫で推進し、ローンチまで責任を持つ人材です。

私も、この3つの役割整理は非常に腹落ちしています。「戦略を構造化するアーキテクト」「業務に落とし込むアナリスト」「価値を届けるプロダクトマネージャー」ですね。企業視点から見て、この定義はいかがですか。
MUIT高橋 非常にクリアになったと思います。それぞれの役割が明確に分かれたことで、育成のゴール設定もしやすくなります。これは海外の事例をベンチマークされているのでしょうか。
経産省山本 その通りです。欧米では、ビジネスアーキテクト、ビジネスアナリスト、プロダクトマネージャーといった職種はすでに確立されており、それぞれの専門コミュニティも存在します。
「IIBA」というビジネスアナリシスの啓発を行う国際的な団体や、「BABOK」という変革推進に関する国際標準の知識体系もありますね。
経産省山本 はい。スキルセットも海外の事例を参考にしています。海外では特にソフトスキルが注目される傾向があるようで、例えば、高度なコミュニケーション能力を持つ教師の方がその強みを活かして異業種へ転職し活躍しているといった事例が紹介されています。
企業側の立場のおふたりから、経産省へのリクエストはありますか。
ファミリー マート大石 ぜひ、資格制度のような客観性のある仕組みを作っていただきたいですね。そうした制度があれば、ビジネスアーキテクトの認知向上に大きく寄与すると思います。
経産省山本 ありがとうございます。資格制度は今後の検討課題に含めています。ただ、ペーパーテストだけでは測れないスキルが多く、実地試験のような仕組みが必要です。そうすると、多くの人を一度に認定するのが難しく、制度の普及方法など今後の議論が重要だと考えています。
MUIT高橋 今ビジネスアーキテクトを担っている人たちに光を当て、プロモーションしていただきたいです。かつてデータサイエンティストという職種は、認知が広がることで価値が理解され、目指す人が増えました。同じように価値が認められれば、現在奮闘している人たちも報われますし、なり手も増えていくと思います。
経産省山本 同意します。今後は、企業の経営者に「こういう人材が必要だ」と認知してもらうことが極めて重要と考えています。同時に、働く個人が「こういう人材になりたい」と思えるような打ち手も必要です。国として、育成の羅針盤をさらに強化し、学習方法やキャリアパスの提示、認知拡大を進めていきます。
最後に、本座談会のまとめとして、国と企業、異なる立場で「変革推進人材が不可欠」と再確認できたことに大きな意義を感じています。経産省が示した3つの役割(ビジネスアーキテクト、ビジネスアナリスト、プロダクトマネージャー)」は、現場の育成プランを作るうえで実践的な指針になりますね。

手前味噌ですが、ケンブリッジでもビジネスアーキテクト育成に特化した研修サービスを提供しています。「育成に取り組みたいが、どうすればいいか分からない」という方は、ぜひご相談ください。

変革推進人材は、間違いなくこれからの日本企業を支える中核になります。官民一体となり「日本にはこの人材が必要だ」と発信し、脚光を当てていきましょう。この座談会が、皆さまの組織で「変革推進人材」をどう位置づけ、どう育てていくかを考える、確かな一歩になれば幸いです。

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