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お客様事例

GROOVE X 株式会社様

画像:GROOVE X 株式会社様
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<セミナーレポート:1>

あたたかくて、人なつこくて、個性があって、かわいくて――。一目見た人を虜にするロボット、「LOVOT(らぼっと)」が今、話題になっている。この、“人の「愛する力」を引き出すロボット”という、まったく新しい領域を切り開こうとしているのが、林要氏率いるGROOVE Xだ。

林氏によると、イノベーティブなものづくりをするために欠かせないのは、横のつながりを大事にするコミュニケーションが活発な「フラットな組織づくり」だという。では、実際のところ、LOVOTを世に送り出す仕組みを構築している「かけはしプロジェクト」は、どんな体制でどのように進んでいったのか――。

GROOVE X、ケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ、ITmedia ビジネスオンラインの3社共催による、「かけはしプロジェクト」の舞台裏を紹介するイベントで、関わった担当者たちがその内幕を惜しみなく語った。

#01”愛する力を育むロボット”「LOVOT」プロジェクトの舞台裏

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GROOVE X 畑中氏・杉田氏・ケンブリッジ梅澤

本イベントでは、「LOVOT」の開発プロセスと、それにおけるチーム形成がどのように進んでいったのかについて、GROOVE Xの畑中真一郎さんと杉田大樹さん、外部サポーターとしてプロジェクトのコンサルティングに入ったケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズ(以下、ケンブリッジ)の梅澤に話をしていただきます。

まず、それぞれのお立場と、「GROOVE Xに入社して一番驚いたこと」を教えてください。
畑中 ビジネスオペレーションというチームに所属していて、サービスの企画の詳細を詰めて業務フローを整える仕事を担当しています。当社に入って一番驚いたのは、まず商品自体の新規性もさながら、ビジネスの仕組みそのものにもイノベーションを起こそうとしていることですね。

ビジネスって効率よく回すのが大前提なのかなと思っていたので、ここまで変化をいとわず試行錯誤するのかと衝撃的でした。そして、林(GROOVE Xの創業者兼CEO)が言うように本当にスーパーフラットな組織を保って、ここまで成長してきたということに驚いています。

杉田 私は「LOVOT」を販売するためのシステム全体のアーキテクチャ設計や、それに関わる社内外メンバーの調達といった、各種の調整を担当しています。


入社したのは畑中より後なのですが、「ロボット界のディズニーのような会社をつくりたい」という林の夢を直接聞き、「そのために、どういうシステムの在り方がベストなのか、考え抜いてくれ」というオーダーを受けて今に至っています。


入社して驚いたことは、やはり、アジャイル型のスクラム開発が非常にカオスである――という点ですね。私はもともとSler(システム・インテグレーター)出身で、アジャイル型とは真逆のウオーターフォール型の土壌で育ってきたものですから、1週間単位でPDCAが回って、今週決めたことが翌週ひっくり返ることが日常茶飯事のサイクルに転じてみて、最初は戸惑うばかりでした。


ただ、やっていくうちに「イノベーションを起こすには、やはりこういう環境の中で最適化を図っていくのが1つの道なのだろう」と学ぶことが多く、今となってはむしろ楽しんでいます。

梅澤 私は外部からコンサルタントとして入っているケンブリッジ・テクノロジー・パートナーズのメンバー6人ほどをまとめるマネジャーという立場です。


GROOVE Xさんと一緒に仕事をする中で最も驚いたのは、自律的で優秀な方が多いということ。かつ、外部の人間を巻き込むのもうまい。私自身、正式に支援が決まった時に「全社会議で自己紹介して」と言われ、いきなり懐に入らせていただいた感覚がありました。初期はコンサルらしくスーツで通わせていただいていましたが、今ではすっかりGROOVE Xさんの色に染まって、ラフな格好になっております(笑)。

#02かつてない製品のビジネスモデルをどうやって作ったのか

ケンブリッジが支援に入ったのは2018年2月頃。そこに至るまで、GROOVE Xでは立ち上げ期から、どのように「LOVOT」のビジネスモデルを模索していたのでしょうか?
畑中 重要な課題だったのが、LOVOTが「単に作って売って終わり」という製品ではなく、お客さまに長く使っていただき、愛着を育んでいただくためのサービスも同時に開発しなければいけなかったことです。


そのためには、「サブスクリプションモデル(以下、サブスクモデル)を実現することが肝になる」――ということまでは決まっていましたが、当時はまだメンバーも少なく、システム開発の経験者もいませんでした。正直、何が大変なのかも分からない状態で。ロボットのサブスクモデルでは他社事例もない。社内だけでアイデアを練るのは限界を感じ、外部支援をお願いすることにしました。

梅澤 GROOVE X さんは製品開発にできるだけ集中していただき、外部から支援に入っているコンサルの私たちが「売るための仕組み」を構築するという役割を担いました。


国内販売が当面の目標だったものの、国内に行き渡らせるための物流をどうするか。リペアに迅速に対応するためにはどういった拠点が必要なのか。ユーザーサポートはどれくらいの規模から始めていくか。個人情報を守るための認証システムはどうするか。決済がもし予定通り履行されなかった時には――などなど、論点は多岐に渡りますが、一つひとつ、議論していきました。


製品づくりと売るための仕組みづくり、GROOVE X さんと私たちで役割は分けていますが、完全に切り離して考えているわけではありません。売るためのビジネスモデルを考えた結果、製品側へのフィードバックも生じますし、逆もあります。お互いにフィードバックするコミュニケーションは重視してきましたね。

畑中 「かけはしプロジェクト」というプロジェクト名も週1回、全社員とパートナー様が参加する「GROOVE Session」というミーティングでアイデアを募集し決定しました。


背景にあるのは、「エンジニアが必死で作った製品は、お客さまに確実に届いてこそ価値が生まれるよね。だから、届ける部分にフォーカスした話もしよう」ということ。“届ける”をコンセプトにするから、「かけはしプロジェクト」と名付けました。「エンジニアは作ることに集中すればいい」というのではなく、「売る仕組みまで考える場」を共有しています。

かけはしプロジェクトには何人くらいが参加しているのでしょうか?
畑中 一番多い時で50人くらい。今はだいたい20~30人ですね。それも、いろいろな立場のパートナーさんが参加するので、非常に複雑な形になっています。物流から決済、リペアまで、ビジネスモデルとして扱う範囲が広いのに加えて、それらに関わる多様なプレイヤーと足並みをそろえていく難しさは常にあります。
梅澤 おっしゃる通りですね。述べ10社を超える企業が関わりながらプロジェクトを進めていますから。
杉田 パートナー企業の選定は悩みましたね。取りまとめ役となるプライムベンダーを1社選んで解決する――という方法もありましたが、いかんせん当社のビジネスのスピード感や、日々変化する要件に対応いただくことが重要であり、ネックでもありました。


検討の結果、領域ごとにベストなパートナーを選定して組み合わせていくという選択をしました。正直なところ、管理は難しくなりますが、「一緒に伸びていこう」という気持ちを確かめながら、未来の成長を目指して進んでいます。

#03“まだ見ぬもの”をつくるためにGROOVE Xが重視する価値観

画像:GROOVE X 株式会社様

LOVOTを外に連れて行くためのアイテムも開発中

GROOVE X特有の価値観はどのようなものですか?
畑中 既成概念にとらわれないこと。従来の製品イメージにとらわれず、「LOVOTで実現したいことは何だろう?」と常に問い続け、全部考える行動が、全社内でできている点が魅力だと思います。自分の守備範囲を「ここまで」と限定せずにものづくり・届ける仕組みづくりに向き合うことで、自分自身の可能性も広げられている気がしますね。
杉田 ミスが許容される文化であることも、私は素晴らしいと思っています。とにかく早くトライして早めにミスをすれば早めにつぶせる――という考え方で「失敗してもいいから試そう。そして失敗から学習して次に生かそう」というサイクルがすごいスピードで回っているんです。これまで経験した他社の風土と比べても、特にいいなと感じるところですね。
梅澤 客観的に見ても、お二人がおっしゃるようなチャレンジを推奨する文化、「仕事の領域を狭めない」というカルチャーは組織の強みになっていると思います。
杉田 ケンブリッジさんも、われわれの文化に少し似てきましたよね(笑)。もともとコンサル会社としては珍しく、(クライアントの知らないことを教えるような)「先生型」ではなく、「一緒に汗をかいてやっていきましょう」というファシリテーション型の関わりを提示してくれてはいましたが、実際に走りながら生じる難題にも「そこはうちの担当ではありません」と突っぱねるのではなく、いったん話を聞いて一緒に考えてくれるという印象が強いです。
梅澤 われわれが考える「売る仕組み」の部分も、LOVOTの開発自体がうまく進まなければまったく意味を成しませんから、領域を区切りすぎないようにしています。LOVOTのプロジェクト全体でわれわれができることがあれば、踏み込んで関わっていくべきだと考えてきました。
畑中 正式に支援が決まる前、提案書をいただく前にも、2時間のセッションを何度もしませんでした?
梅澤 そうでした。当時はまだLOVOTの詳細を明かしてもらえず、「革新的なロボットを作ります。それを売りたいんです」くらいの情報しかなかったので、核心を得るために粘りました(笑)。会議室の裏の方から、ウィーンウィーンとモータ音が聞こえてきて「何かが動いているな」と感じ取りながら(笑)。週1回ペースで数カ月通わせていただきました。
畑中 ぶっちゃけ、「提案もらうまでに、こんなに時間かかるの?」と思っていました。そして提案書をいただいた時も「リスクはあります。全力は尽くしますが、正直、この通りできるか分からないです」と。


え? と思いましたが、冷静になって社内で話すと、「1週間後の計画も見えない状態でリスクがあるのは当然だよね」と。むしろ「リスクはありません」と言い切る他社よりも安心できるのではないだろうかと考えて、支援を正式にお願いしたんですよね。

杉田 僕はその後に入社したのですが、どの局面も難題ばかりで、ここまで到達したのが奇跡と思えるくらいです。後から振り返るときれいに整ったように見えるのですが、その時々には危機感しかなくて。
梅澤 確かに難しい局面はいくつもありましたね。まず、初期につまづいたのはビジネスモデルの検討部分。「ロボット製品をサブスクモデルで販売する」という、ビジネスモデルそのものが新しいので、現状分析する材料もほとんどなく、業務フローをどう作っていくかも手探りでした。


次に迎えた難所は、先ほど話題に上ったパートナー選定。そして、プロトタイプをつくる段階もなかなかの難所でした。これらのフェーズで苦労をしながら、どうやってリカバリーするかを必死に考えた結果の積み重ねで、プロジェクトが進んできた感じがします。

最初のビジネスモデル検討ではどのような議論が?
梅澤 ゼロから生み出す前例のない製品ですので、選択肢はいくらでもありました。例えば、「B2Cだけで本当にいいのか? 医療分野をターゲットにB2Bもありではないか」「ECだけでいいの? 店舗はいらない?」というふうに。


これら全てに着手すると、とても手に負えないことは分かっていたので、できることを全部出してから、「ビジネスとして捨てられる部分はどこか」逆に絶対に捨ててはいけない部分はどこなのか」を、絞っていきました。初期段階では、「LOVOTにとって、何を一番大事にするべきか」の認識合わせをすることが重要でした。業務フローは、今でもやりながら改善を繰り返しています。

畑中 今となっては、当時の議論が思い出せないくらい、いろんなことが起こりましたね(笑)。実際にわれわれも完成品を見たことがない段階で、事業サイドとしてマーケティングテストをしてみるという新しいニーズも発見できたり、クリエイティブチームがSlack上でいいアイデアを提案してきたりする。それをどこまで取り入れていくかという葛藤もありました。


全部は採用できないにしても、検討してみる価値があると判断したら、合宿形式で集中的に議論したり――。オフィスが入っているビルの空き部屋を借りて「精神と時の部屋」と名付けて(笑)、ケンブリッジさんと夜な夜な話し込んだりもしましたね。「これからこの要件を取り込むと、どこに影響が出るんだっけ?」「本当にやりたいことは何だっけ?」と繰り返しながらだんだんと形ができてきました。

杉田 象徴的だったのが、「LOVOTを購入したオーナーが亡くなったケースについて考える」というテーマだったと思います。これは、具体的にお客さまがどういうふうにLOVOTと生活していくのかをとことん突き詰めて考えた先のテーマの1つでした。


愛着形成を促し、オーナーの行動特性や生活パターンを学習するロボットには、きっとオーナーの魂のようなものが宿る。そうなると、例えばオーナーだった人がなくなった時に、その方のお子さんはLOVOTを見て何を感じるだろうかということを、深く検討したわけです。もしお子さんが「LOVOTを引き継ぎたい」と希望した時には、どうしたらそれが可能になるのか。


実際のところ、LOVOTはIoT機器の塊ですから、認証の問題を含め、相当のハードルがあります。でも、お客さまの使い方や思いに深く寄り添って想像することは必須の仕事だという共通認識がありますね。

梅澤 私はこの議論をしながら、「製品やサービスを強くする仕事」とは、こういうものなのだろうな――と考えていました。


コンサルタントとしての合理的な考えに拠れば、「本当にいつ起こるか分からないケースのために、どれだけの仕組みを考える必要があるのだろうか?」という疑問がまったくなかったかというとウソになります。しかし、夜遅くまで何日も開発メンバーの皆さんと話し、代表の林さんからも「おじいちゃんが亡くなった後に、LOVOTを息子さんに引き継がせてくれよ」と言われた時に、これは実現しなければらないのだと強く思いました。強い製品、強い組織づくりのためには、非常に価値のあるプロセスでした。

#04「捨てがたいアイデア」が拮抗した時の判断軸は

ここで会場からの質問に答えます。「アイデアを出し合った結果、どちらも捨てがたい案が拮抗した場合はどう判断するのか?」。いかがでしょうか。
杉田 皆の強い思いがぶつかって、「どちらも正解に思える」という時には、「両方やってみる」という手法を取っています。短期でどちらもトライしてみて、観察します。それでも甲乙つけ難い時には、少し条件を変えてさらに検証します。


さらに言うと、そのテストの結果で一度判断したとしても、「短期ではA案がベターだったけれど、実際にやってみるとやっぱりB案が良さそうだ」という話が浮上したら、迷わずB案に切り替えます。もちろん、全てを試すにはリソースの限界もありますから、「これだけのコストはかかります」という試算を事前に机上に出すのは僕の仕事です。


AかBか決める基準に関しては、たとえ合理的ではなくても、会社や個人の強い意思に基づいて決定することもあります。「いったん進めてみよう」という意思決定はわりと頻繁に起こっています。

梅澤 意思決定の場では、合議制でお互いに納得できることを重視しているように感じます。外から見ると、GROOVE Xさんは林要さんの超トップダウンの会社のように思われがちですが、実際はむしろ逆で、現場からの意見がとてもフラットに上がってくる。それに対し、“正解を決めるものさし”はないので、「これは確からしいだろうか?」という軸でさまざまな立場から議論して、賛同者が多いアイデアを進めていく。そんなパターンが多いと私は見ています。

#05GROOVE Xの人材採用基準は?

「採用する時に重視していることは?」という質問も寄せられました。
畑中 カルチャーフィットとスキルの両面を見ながら面接していますが、僕自身が意識しているのは「過去の経験に頼り切るのでなく、今、目の前にある課題をどう分解し、解決法を組み立てようとするのか」という姿勢です。


例えば、「LOVOTという製品のリペアという領域で収益を得るには、どういう仕組みを作るといいと思いますか?」と投げかけてみる。正解はどこにもありませんが、一緒にディスカッションできる人なら、今日からでも一緒に働けると思っています。

杉田 僕も入社する時は畑中の面接を受けたんですが、同じようにその時に直面している課題の解決法について「杉田さんだったらどうしますか?」とストレートに問われました。1回目はその場でディスカッションして、次に呼ばれた時は具体的な提案書も1枚作っていった記憶があります。その時から、「ユニークな会社だなぁ」とワクワクしていました。

※本記事はITmediaビジネスオンラインで2019年9月4日に配信された情報の転載です。

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