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お客様事例

因幡電機産業株式会社様

画像:因幡電機産業株式会社様
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「技術商社」として電設資材業界でトップの売上を誇る因幡電機産業株式会社様は、2016年1月から3年半にわたりケンブリッジの「ファシリテーション型コンサルティング」を活用し、情報システム部の組織変革プロジェクトに取り組まれています。
今回は、プロジェクトマネージャーとして現在も組織変革を主導されている野田様、推進メンバーの田中様、ケンブリッジの堤野が、戦略企画提案を通じて経営に貢献する「攻めのIT組織」実現に向けて取り組んだプロジェクトを振り返ります。

#01「攻めのIT組織」への変革を目指したプロジェクト

画像:因幡電機産業株式会社様

管理本部システム統括部長 野田氏

最初に、因幡電機産業株式会社の概要について教えてください。
野田 当社は1938年に創業し、2018年に80周年を迎えました。独立系の専門商社として照明器具、エアコン、配分電盤といった電設資材及びセンサ、スイッチ、リレーといった産業機器の卸販売並びに空調用部材や防災製品の製造販売を行っています。開発機能とメーカー機能を併せ持つ「技術商社」という独自のポジションを築いています。

情報システム部(以下、情シス部)は、大阪本社・東京本社の約30名という体制で、主に基幹システムの企画・構築・運営を行っています。システム開発に関する概要設計はほぼ全て自社で行っており、このほかにも社内ITインフラの構築、各部門のヘルプデスク機能などを担っています。

今回の組織変革プロジェクトに至った背景を教えてください。
野田 当社は2014年に売上2,000億円を突破し、次なる目標として「売上3,000億円の達成」が掲げられました。その際、社長から「従来通りのやり方では目標達成は難しい。部門ごとに抜本的な施策を考えてほしい」との指示がありました。

これまでの情シス部は、各部門からの依頼に対応する“受け身”の業務が中心でした。真の意味で経営に貢献できる組織になるためには、情シス部の機能を根底から見直し、経営層や各部門に戦略企画を提案できる組織に生まれ変わる必要があると考えました。当時書いたメモを見ると、「情シス部からIT戦略部になる」とあり、「コンサル会社を活用した施策の立案」「戦略企画の専門部隊立ち上げ」といったアイデアが記されています。


同じく当時、上司と話していた際、「ウチには全社的な変革活動を支援する組織がなく、やれるとしたら情シス部くらいしかないな」という話題になり、そこから頭を巡らせ、「全社の業務に関わっている情シス部なら、その役割を担うことができるかもしれない」との考えに至りました。


こうした中で、プロジェクトの立案から実行だけでなく、変革を担う人材を育ててくれるコンサル会社を探すため、お取引先や協力会社から情報を集めたところ、2014年の秋にケンブリッジと出会いました。そこから相談を重ね、組織変革プロジェクトに関する提案書を作成して何度か上申しましたが、いずれも時期尚早と言われてしまって。

途中で心が折れかけたものの、ケンブリッジが良い意味で“しつこく”支えてくれたこともあり、2015年秋に再び上申しました。すると、「これはケンブリッジが作った提案書だろう。君自身の意志が見えてこない」と言われてしまって……。そこで、前々から温めてきた自分の想いを整理し、できあがったのが「IT部門に関する6つの指針」でした。この指針をベースに再度上申し、ようやく承認を得ることができたのです。

ケンブリッジ 堤野 今回のプロジェクトは、野田さん自身の言葉で形作られた「6つの指針」という強固な土台の上に成り立っています。この指針があったから、プロジェクトメンバーもケンブリッジもぶれずに走りきることができました。

#02「当事者意識」を喚起した課題分析フェーズ

ケンブリッジとの協働は2016年1月に始動しました。
野田 最初に取り組んだのが、情シス部の中期ITマネジメント方針を策定するプロジェクトでした。この時は私と部長代理、情シス部の課長3名でスタートしましたが、どちらかと言えば、私以外はプロジェクトに対して懐疑的でしたね。
堤野 今回のプロジェクトでは、2016年3~4月に組織変革の全体コンセプト、課題の分析、施策の策定、ロードマップの作成を行うフェーズ、同年5月以降は施策の実行に向けた計画作りと実行のフェーズ、そして2017年4月から新しい組織形態に移行する、という流れを想定していました。


最初に行った「Concept Framing」では、「6つの指針」をもとに全員が目指したいと思える「情シス部のありたい姿」を考えました。その際、ケンブリッジから「企業におけるIT活用の変遷」「IT組織・人材のトレンド」「先進的な他社事例」を示し、それらをヒントに方向性を固めていきました。次の課題分析フェーズでは、現状の課題を棚卸しして15個の主要課題にまとめ、因果関係のシステムループ図をもとに優先順位付けを行いました。

野田 実行フェーズのセッションでは、特にメンバーの「当事者意識」を見ていました。それが組織変革のカギになると考えていたからです。セッションでは様々な意見が出ましたが、どこか他人事のように課題について話し、危機感が見えてこない。「それが課題だと心から思ってる?」と何度も突っ込みました。課題については私にも責任がありますが、それを承知で厳しく突っ込んだことで、メンバーの意識を少なからず変えられたと思いますし、私の本気度も伝わったはずです。
堤野 セッション中に組織変革プロジェクトの名前が「LIONプロジェクト」に決まりました。皆さんで議論し、次代の因幡電機産業をリードする組織になるという意味を込めて「Leading Inaba Organization for Next generation」になりました。
野田 私がライオン好きという理由もありますが、夢は大きく、ライオンのように力強い情シス部になろうといった想いも込めています。

#03組織変革を通じて長年の課題に切り込む

野田 今回のプロジェクトの大きな目標は、「戦略企画を考える専門部隊の立ち上げ」でしたが、その実現には「組織」「仕組み」の双方で多くの課題がありました。


「組織」では、情シス部にはシステム企画課、システムソリューション課、オープンソリューション課があり、それぞれに課題がありました。システム企画課は2014年に行った新基幹システムへの移行を担ったプロジェクト型組織で、移行後もそのまま残して戦略企画の立案を指示しましたが、ノウハウや経験が不足していたため、機能不全に陥っていました。また、システムソリューション課は基幹システムの開発・運用・保守を、オープンソリューション課は社内イントラなどオープンシステムのそれを担当していましたが、横の連携がなかったために互いのシステムに関知せず、業務の重複も多数ありました。


「仕組み」では、情シス部は基本的に全ての相談・依頼を受けるスタンスで、その数は月に200件近くにもなります。しかし、実施判断・優先順位付けの基準がなく、個々の対応にも時間がかかるため、案件がどんどん溜まってしまう状態でした。また、システムが多様化したことで対応が長期化したり、すぐに別の不具合が発生したりする。こうした様々な課題により、業務の生産性も低下していたのです。


特に保守案件対応は情シス部にとって長年の課題であり、新たな取り組みを阻害する最大の要因となっていましたが、これだけの数の課題を整理し、解決策や実施計画を取りまとめるとなれば、おそらく我々だけでは無理だったはずです。その意味でも今回、ケンブリッジがうまく交通整理してくれたおかげで、課題全体を俯瞰的に捉えながら施策や計画を固めていくことができました。

堤野 その後は保守案件数の抑制や生産性向上、ジョブローテーション、アウトソース活用などを念頭に、新たな組織形態、各課の役割、業務フロー、基準やルール、他部門との連携などについて検討しました。各施策が固まった後はマトリクスを使って優先順位を決め、ロードマップを作成しています。
野田 「攻めのIT部門」に至るための道筋が定まり、2016年4月からは約1年かけて施策の実行に向けた計画作りと試行・改善に取り組みました。個別の施策を検討するセッションには中堅・若手のリーダー層に推進メンバーとして加わってもらい、そこで合意形成を図った上で管理職のセッションを経て最終的な方針を固めました。


そして2017年4月、情シス部はシステム企画課、システム開発課、システム管理課という3課に再編され、新たにスタートしました。システム企画課は戦略企画立案の専門部隊に、システム開発課は保守案件対応をなくして開発に専念できるようにしました。また、基幹・オープンというシステムの壁を取り払い、それらの保守・運用に関する案件対応をシステム管理課に集約しました。


とはいえ、実際は形から入ったというのが正直なところで、企画課の人数を増やしたことで開発・管理課は業務がハードになるなど、変化に伴う副作用もありました。プロジェクトについては課長や推進メンバーから都度説明していましたが、私も課会に顔を出してはプロジェクトの目的や未来像を説明し、「一時的に忙しくなるけれど頑張って乗り越えてくれ」と励ましていました。


再編後は各業務にかかるプロセスやタスクを減らしたほか、保守案件の実施判断・優先順位付けの基準も作り、月1回、管理職で行う「判定会議」で仕分けを行っています。また、判定会議の参考とするため、各部署には依頼時に「案件の目的と想定される効果」を提出してもらうようお願いしています。


保守案件の依頼を受ける際には依頼元部署に費用感を求めたり、各部署とも課長職以上でなければ依頼ができないルールも定めました。依頼のハードルを上げ、情シス部の外に機能を移行したことで、案件数の抑制や作業負担の低減が実現できました。この組織再編を通じて保守案件対応の問題に着手できたことは、情シス部にとって大きな一歩になりましたね。

堤野 組織再編の直後に行ったヒアリングでは皆さん四苦八苦されている様子でしたが、一方で「やるべきことがシンプルになった」「情報共有や部全体の業務のつながりを意識するようになった」という声もありました。直近では「今は業務もうまく回っている」と話される方が増えています。

#04 企画提案第1弾、受発注業務改革に向けた「IN3(インキューブ)プロジェクト」

画像:因幡電機産業株式会社様

管理本部 業務システム部 田中氏

堤野

組織再編後は、システム企画課のメンバーと全社的な課題について議論し、3つに絞り込んだテーマの中から「営業部門の受発注業務改革」を選びました。2017年秋にはLIONプロジェクトから派生する形で、システム企画課の第1弾企画となる営業部門の受発注業務改革に向けた「IN3(インキューブ)プロジェクト」がスタートしました。

野田 当社では、お客様である販売代理店からの見積り依頼や注文、仕入先メーカーへの問い合わせや発注など、一連の受発注プロセスがFAXを介して行われています。中小規模のお客様や仕入先メーカーが多く、その数も数千社にのぼるため、こうした形にならざるを得ないのですが、その作業負担が長年にわたり営業活動を圧迫していました。


営業部門のフロアには複数のFAX機があり、1人の営業担当に対して1日約100枚ものFAXが届きます。四六時中その仕分けに追われ、受信確認の電話が入れば、その紙を探さなければなりません。送られてきた紙に上書きして返信することも多く、最後は文字がかすれて読めなくなる。営業担当のデスクは常に紙が山積みで、多くは帰社後に対応していたため、残業も常態化していました。営業担当が本来の業務に集中できないばかりか、返答も遅れがちになり、お客様を待たせてしまうといった問題も生じていたのです。営業担当が業務に集中できれば、売上だけでなく、お客様満足も向上していきます。ここに情シス部として貢献するべく企画提案したわけです。

堤野

IN3プロジェクトでは、推進メンバーが営業部門を訪れて課題に関するヒアリングを行い、その後は営業担当とも連携しながら「営業部門のあるべき姿」について検討し、必要な機能要件を洗い出しました。その後、要件を満たすFAXの電子化サービスを探しつつ企画提案書をまとめて上申し、無事に承認されました。

野田 まずは試行として電材カンパニー西日本統括部の近郊1課から導入し、それをモデルに10の営業課・営業所に順次展開を進めています。当初は不慣れなシステムに戸惑ったようですが、最近は「業務の負担が大幅に減った」「お客様対応が早くなり、喜ばれている」といった声が聞こえてきています。現在はシステム企画課がPMO的な役割を担い、営業部門や経営企画室と連携しながら他の営業エリアへの導入を進めています。


FAXは当社にとって長年の課題であり、そこに切り込んだIN3プロジェクトは非常に大きな意義がありました。それ以上に、受け身仕事が中心だった情シス部が業務改革を企画提案し、経営層や他部門を巻き込みながら実行し、成果が出ていることが何より嬉しいですね。実は、上申した企画提案書では、FAXの電子化の先にある「営業部門の組織変革」という骨太企画まで提案しましたが、時期尚早と言われてしまって……。しかし、さらに企画の精度を高めて今後も粘り強く提案していきたいと思っています。

堤野 IN3プロジェクトは若手の推進メンバーが中心になり推進していましたが、野田さんは役員へのプレゼンも若手に任せていました。上司としては不安になり、自ら前に出てしまいそうなところですが……。
野田

誰よりも本気になって企画を考えた人が直接説明したほうが、より伝わりやすくなると思ったからです。実際にプレゼンの熱量も高く、見事に承認を取り付けたわけですから、任せて良かったですね。「人を育てる」ことも今回のプロジェクトの目的なので、そうした場を経験するのは勉強になりますし、やりがいにもつながりますよね。

田中 IN3プロジェクトでは、システム企画課にいた私がリード役を務めました。まだ企画課に入ってから2年目だったので不安はありましたが、従来は受け身仕事が多かったため、ようやく企画課本来の仕事ができるという喜びが大きかったですね。業務改革のプロジェクトワーク、他部門との協働なども初めての経験でとても新鮮でした。役員へのプレゼンはプレッシャーもありましたが、ケンブリッジと一緒に何度もリハーサルを行ったので、本番では自信を持って臨むことができました。

#05成長と変革に向けた全社の組織再編

2019年には全社的な組織再編も行われています。
野田 当社は中長期的な成長を目指し、2019年4月1日付で事業部制からカンパニー制に移行しました。また、同日付で各カンパニーに「企画室」も新設されました。これは各カンパニー長の直轄組織で、戦略企画や業務改革を推進する部隊として設置されました。加えて、10月1日付で業務システム部が新設され、その下にシステム企画課が入り、私は情シス部と業務システム部を見る形になっています。
堤野 システム企画課は「ITを活用した業務最適化を考える」という使命を帯びており、各カンパニーの企画室は業務改革を担っていく。こうした新たな動きは、情シス部の活動をきっかけに経営層でも変革への意識が高まっていることの表れではないでしょうか?
野田 そうであれば嬉しいですね。今後は各カンパニーの企画室とシステム企画課が連携し、様々な改革に取り組んでいきたいですね。その中で我々もケンブリッジから学んだノウハウを波及させていきたいと思っています。
堤野 LIONプロジェクトでは2019年の春、全社の成長戦略や課題を踏まえて考えた「2025年の情シス部のあるべき姿」を作成しました。現在は個別のテーマに区切り、推進メンバーを中心に「あるべき姿」を具体化していく活動を進められています。
野田 シンプルな形で言語化・ビジュアル化された「あるべき姿」を作成したことで、メンバーの視点や意識を揃えることができ、今はこれを情シス部全体で共有しながら様々な活動を進めています。
堤野 2019年は企画提案の第2弾として、物流改革に向けた「WILLプロジェクト」が始まっています。これは同年1月からシステム企画課のメンバーとセッションを重ねて内容を固め、現在はケンブリッジが離れて“自走”による実行フェーズに入っています。最近は経営層からも様々な相談が寄せられているそうですね。
野田 役員から急に電話が入り、「頼むぞ」と言われることもありますね(笑)。一方で「攻めるだけでなく、守りの強化も必要だ」とも言われています。当社はまだまだIT活用の基盤が弱いため、それも並行して注力していこうと思っています。


我々はITに関する様々な情報を持っており、それらを上手に活用していただくことで、経営や各カンパニーの課題を解決してほしいと考えています。きちんとした企画提案書を作って上申するだけでなく、何気ない立ち話の中でも役立つ情報、つまり、改革や改善について考える“きっかけ”を提供することも大切な役割です。


将来的には部門横断型プロジェクトや全社的な変革プロジェクトにも取り組みたいですし、その際は情シス部やシステム企画課がPMOの役割を担ってくれたらいいですね。とはいえ、そのための経験値やノウハウ、人的リソースが足りていません。今後も様々なプロジェクトを通じて変革を担える人材を育てていきたいですね。

#06 プロジェクトを通じて「人が育つ」組織へ

LIONプロジェクトが始まった当初は野田部長や各課長が中心でしたが、その後はベテランから若手まで十数名の方々が推進メンバーとして参画されています。
野田 今回の目的として「人を育てる」「当事者意識を持ってもらう」ことがありました。部全体の意識を一気に変えるのは難しいため、最初は少人数で始め、段階的に人を増やしながら部全体に影響を広げていこうと考えていました。また、当初から「セッションでは立場に関係なく、誰もが自由に意見を言える場にしよう」と言っていたため、最近は活発に意見が出ますし、目的やゴールを意識した発言も増えています。


推進メンバー以外の社員にもプロジェクトに関わってもらおうと、部内の改善活動などについて検討する「LION研究会」を立ち上げたり、具体化した施策の進捗を推進メンバーが管理するという仕組みも作りました。他にも「ヴィレッジ制度」を定めました。所属課の垣根を越えて5つのグループを作り、推進メンバーがそれぞれの長になってLIONプロジェクトの内容を共有し、社員から意見を吸い上げてプロジェクトに反映させるというものです。


さらに、数年前から情シス部では「組織で人を育てる」を合い言葉に、所属課の枠を越えて新人や若手を育てる様々な制度を作っており、最近は成長した若手が新人を積極的にサポートするといったサイクルが回り始め、部全体のスキルアップにも役立っています。

堤野 各課長が素案を作り、推進メンバーと一緒に検討してまとめた「組織のグラウンドルール」も定められています。ここには「挑戦しよう」「周りに気を配ろう」など、前向きな言葉や仕事をする上で大切にしたい事柄が並んでおり、ポスターも作って壁に貼り付けています。
野田 暗黙の了解レベルでは理解が広がりませんから、「言語化して示す」ことが大切ですね。部全体の合意事項として挑戦することが認められていれば、新人や若手も意欲的に仕事に臨んでくれるようになります。
今回のプロジェクトを通じてケンブリッジが残したものとは?
野田 明確なビジョンとゴールの設定、スケジュールとタスクの綿密な管理、プロジェクトの推進力となるファシリテーションなど、たくさんあります。何について議論し、何を決めるのか。いつまでに、誰が、何をやるのか。全てを明確にした上でプロジェクトを進めていたので、複雑なテーマでも結論までたどり着けました。何より、ゴールに向かう熱量とスピードには大いに影響されました。現在はケンブリッジから学んだことが随所で生かされています。


ケンブリッジは先生であり、相談相手であり、そして3年半にわたり共に歩んでくれた同志でした。私を含め推進メンバーには「後ろにはケンブリッジがいる」という安心感が常にあり、そのおかげで様々な困難を乗り越えて今日までプロジェクトを継続することができました。

田中 LIONプロジェクトに参画してからは、全体最適の視点で物事を俯瞰的に捉えられるようになったと思います。ファシリテーションでは、議論をまとめるノウハウも印象的でしたが、事前準備(Prep)が何より大切であることを学びました。スクライブも最初は難しかったのですが、今はもう書くことが当たり前になっています。


最初はケンブリッジのお手本を見ながら学び、段階を踏みながら徐々に自分達でセッションを回していけるようになり、現在行っている会議やセッションでも学んだことを大いに生かしています。他部門の会議でも、我々がスクライブすると終了後にスマホで撮影して議事録代わりにしている参加者がいて、「わかりやすくまとめてくれるから、とても助かる」と言われることも多いですね。


最近は情シス部内でも、様々なことに課題意識を持つ人、積極的に意見を言う人が増えています。今後はこうした雰囲気を情シス部の外にも広げていきたいので、企画提案の量と質を高めながら様々なプロジェクトに取り組んでいきたいですね。


#07(変革)プロジェクトを成功に導くリーダーの役割とは?

堤野 今回のプロジェクトでは、リーダーである野田さんの「引っ張る、任せる」といったマネジメントが優れていたことも1つの成功要因だったと思います。特に「待つ」「見守る」姿勢が強く感じられました。
野田 推進メンバーはどう感じているのかわかりませんが(笑)、例えば、私がセッションで意見するとそれが答えになりかねないので、見守り役、相談役に徹していました。とはいえ、コミュニケーションは一方通行ではなかったと思いますし、率先垂範も強く意識していました。変革プロジェクトのような長期にわたる取り組みは、参画する人の心持ちが重要になります。リーダーである私が誰よりも一生懸命に動き、想いを語り続ける。そうしなければ、人の心は変えられませんよね。


外部要因もあるため、プロジェクトがうまくいかないのは当たり前。大切なのは、失敗しても立ち止まらず、対話を重ねながら改善し、前に進み続けることです。私は「想いを持ってやれば、必ずできる」と思っており、そのためにチャンスを与えることも私の大きな役割だったと思います。

堤野 その想いは確実に伝わっているはずです。野田さんの想いが詰まった「6つの指針」が起点になり、推進メンバーが具体的なプロジェクト構想を作り、現在、LIONプロジェクトは推進メンバーが、IN3プロジェクトやWILLプロジェクトはシステム企画課が主体となってしっかりと“自走”されています。
野田 プロジェクトが始まった当初から、推進メンバーには次のように語りかけてきました。「このプロジェクトは君達自身が10年後、20年後、どんな仕事をしていたいのか、どう働いていたいのか、それを考える取り組みだ。その頃になれば、私や課長は会社にいないだろう。将来のありたい姿を自分達で描き出し、自分達の力で実現してほしい」。


情シス部はあまり目立たない部署で、業務内容もわかりにくいのですが、結構大変な仕事が多い。社内の誰もがお世話になっているITを支えているわけですから、もう少し評価されていいのではと感じることもあります。そのため、若い頃からずっと「IT部門の価値を向上させたい」と思い続けてきました。


今回、組織変革のチャンスをいただけたことは本当に嬉しかったですし、次代の情シス部を担う人達のためにも役立つものを残したい。そして、ITの力とより良い企画提案を通じて会社の持続的な成長に貢献し、お客様に喜ばれる事業とともに、社員が幸せになれる職場を創り出していきたいですね。


本日は貴重なお話、ありがとうございました。
画像:因幡電機産業株式会社様

プロジェクトメンバーのみなさま

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