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お客様事例

全国共済農業協同組合連合会様

画像:全国共済農業協同組合連合会様
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全国共済農業協同組合連合会様(以下、「JA共済連」 または 「会」 という。)は、会内での変革人材の育成を目指し、人材育成体制の整備およびそれを支援するタレントマネジメントシステム導入のプロジェクトに取り組みました。

#01ひと・いえ・くるまの総合保障

画像:全国共済農業協同組合連合会様

全国本部 人事部 大久保氏

最初にJA共済連の概要について教えてください。
大久保 JA共済連は、相互扶助を事業理念とし、「共済」という仕組みを通じて「ひと・いえ・くるまの総合保障」を提供しています。もともとは別法人であった47都道府県の県域連合会と、全国域連合会が、2000年に統合し、1つの組織となりました。現在は、全体で職員6,000名以上の組織となっています。

#02現状を打破できる人材の育成

改めて、プロジェクト発足の背景を教えてください。
大久保 職員に対して実施した意識調査の結果において、職員が「能力開発」や「人材育成」を重視している一方で、現状への満足度が低いことが明らかとなりました。

人材育成について管理職個人の取組みに依存しているなど、組織としての育成の型・仕組みの整備が不十分な部分があったと感じています。

また、環境変化が非常に激しい時代ということもあり、これからは「環境の変化に柔軟に対応しながら、組織の変革を推進できる人材の育成・制度の整備」が急務だと捉え、プロジェクトを発足しました。

検討にあたっては、他社の取組事例をそのまま導入すると組織風土に適合せずに形骸化してしまう懸念があると考え、一から徹底的に議論することを選択しました。

どのようにプロジェクトを進めていかれたのかを簡単に教えてください。
大久保 まず初めに、2つの定義の検討に取り掛かりました。

1つ目は、JA共済連として目指すべき「変革人材の定義(人材要件定義)」で、2つ目は、職員一人ひとりが自律的にキャリアを開発するための指針となる「キャリア方針書」です。

次に、それらの定義に基づき、成長を支援するための仕組みとしての運用施策を検討しました。そのうえで、運用施策の効率的かつ効果的な実施や施策の運用によって得られるデータを蓄積するための土台としてタレントマネジメントシステムの構築を進めました。

ケンブリッジさんからは「JA共済連らしさ」や「運用が大事」ということを言われていたので、プロジェクトの中で、常に意識しながら検討を進めました。

#03目指すべき変革人材の定義(人材要件定義)

画像:全国共済農業協同組合連合会様

(図1)目指すべき変革人材像の定義 イメージ

目指すべき変革人材はどのような背景で検討されたのでしょうか。
大久保 これまでも「求める人材像」は示していたのですが、少し抽象的で、職員がどのような行動をすべきなのか分かりづらかった点がありました。

このような課題から、まずは会が求めたい変革人材、職員に目指して欲しい人材像を具体的に定義し、育成を進めるための土台を作ろうと考えました。

「変革人材の定義」は具体的にはどのようなものでしょうか。
大久保 刻々と外部環境が変化する中、組織が環境に適応していくためには、変革を推し進めることができる人材を育成していかなければなりません。そのことを念頭に、今後どのような行動・能力が求められるのか、環境が変化するなかでも、JA共済連として守らなければいけない使命は何かを議論しました。最終的に、9つの項目に絞り込み、各項目に対し、1~5までのレベルを設け、レベルに応じた職員の具体的な行動・能力を記載しました(図1)。

例えば、「決断する」という項目であれば、

Lv.1:自分なりの主張をもって発言している。

Lv.3:判断に必要な情報を取得し(情報不足でも仮説に基づいて)、決断することが習慣化している。

Lv.5:事業全体に影響を与える案件に対して、あるべき将来像も踏まえて何を重要視すべきかを明確にした上で決断している。

というようなイメージです。

定義の狙いや工夫、検討の際に気をつけた点などがあれば教えてください。
大久保 将来を見据えた育成が可能となるよう等級・階層ごとに定義を作成せず、コース(職種)ごとに1つの物差しで測れるようにしました。また、浸透・定着しやすい仕組みとなることを重要視し、極力、内容が複雑になりすぎないように気をつけました。

管理職にとっても、どこを目指して部下を育てればよいかが明確になるため、部下育成に取り組みやすくなるのではないかと考えています。これにより職員の成長が加速していくことを期待しています。

#04組織内でのキャリア開発を推し進めるための方針(キャリア方針)

職員のキャリア開発に向けてはどのような検討をされたのでしょうか。
大久保 職員一人ひとりが自律的にキャリア開発に取り組んでいくための指針として、各コース(職種)や世代に求める組織への貢献方法を、「キャリア方針書」という形で提示することにしました。

職員それぞれが「キャリア方針書」にもとづく各コースや世代に求められる貢献方法を理解したうえで、自身の強みを伸ばして欲しいと考えています。また、自らの活躍分野を広げるとともに確立し、自身の働く意義を見出してほしいという思いを込めました。

#05「変革人材の定義」と「キャリア方針書」を踏まえた、運用施策

「変革人材の定義」や「キャリア方針書」はどのように活用するのでしょうか。
大久保 「変革人材の定義」や「キャリア方針書」は作っただけでは形骸化してしまうので、これらを活用した運用施策を設計し、業務を遂行していく中で職員が能力アップしていけるような仕掛けを作りました。
「変革人材の定義」を用いた能力開発施策(仕掛け)についてお聞かせください。
大久保 まず期初に職員が「変革人材の定義」に定められた項目の中から当年度に能力を開発していきたいものを選択し、到達目標レベルを設定します。その上で、上司と面談し、目標に対してのアドバイスを受け、具体的なアクションプランを検討してもらいます。

そして期中には、設定した目標、上司より受けたアドバイス、アクションプランなどを意識しながら、業務に取り組んでもらいます。その後、目標に対して取り組んだ結果を本人と上司がそれぞれ診断した上で面談を行い、上司からのフィードバックやそれぞれの考えの共有を行います。こうすることで、職員が自身の強み・弱みを認識し、成長していくことができると考えています。

「キャリア方針書」はいかがでしょうか。
大久保 「キャリア方針書」に基づき、職員のキャリアの節目ごとに「キャリアアップ研修」を開催します。この研修では、職員にこれまでの経験について振り返ってもらうことで、キャリアに対する自己探索を促しつつ、今後のキャリアプランを立ててもらいます。その後、人事部との面談を通して、職員の自律的なキャリア開発を促します。
″セルフ・キャリアドック”のような考え方に通じる部分がありますね。
大久保 はい。近年、企業によるキャリア形成支援を含めた人材育成が注目されており、従業員のモチベーションや定着率の向上、生産性の向上に効果があると言われています。また、職業能力開発促進法において、企業に従業員の能力・キャリア開発が求められるのはもちろんのこと、従業員にも、自発的な職業能力の開発および向上に努めることが求められています。このようなことから、JA共済連でも組織内のキャリア開発に力を入れていきたいと考えています。
今回、研修体系も抜本的に見直されましたよね。
大久保 はい。「変革人材の定義」に基づき明確となった自身の成長課題や、自身のキャリアのフェーズに応じて、職員自身で研修を選択して受講できる「選択型研修」を導入しました。能動的な研修受講により、職員の自律的な能力開発につなげることを狙いとしています。各個人の目標やフェーズに応じて求められる思考、行動、振る舞いを、研修を通して身につけてほしいと考えています。

#06タレントマネジメントシステムの構築

画像:全国共済農業協同組合連合会様

(図2)人材育成の好循環サイクル

今回、それぞれの能力開発施策の結果を含めた人材情報を蓄積する仕掛けも導入しましたね。
大久保 はい。設定した目標、目標に対しての実績、受講した研修、人事との面談の結果などは、今回新しく導入した「タレントマネジメントシステム」に蓄積され、可視化されます。こうすることで、職員一人ひとりのこれまでの育成状況を踏まえた、効率的かつ効果的な育成計画の策定や、適切な人材配置(異動検討)、管理職間の部下育成の引き継ぎなどに役立てることができるようになると考えています(図2)。

タレントマネジメントシステムの構築についても、ケンブリッジさんに支援していただきました。システム周りのプロジェクト管理の他、各フェーズで様々なアドバイスを頂き、予定通りリリースを迎えられました。

#07更なる制度の浸透、育成機会の提供を推進

各施策やシステムは、どちらもリリースされたばかりですが、今後に向けた展望をお聞かせください。
大久保 プロジェクトでの取り組みの結果、職員育成の素地ができたと思っていますが、「運用が定着している」とはまだ言えない状況です。ケンブリッジさんからは「スタート後の浸透が重要」だと言われていますし、我々としても管理職・職員の更なる理解促進のため、二の矢、三の矢を放っていく必要があると考えています。今後は各都道府県本部の人事担当者や管理職層に旗振り役になってもらって更に制度を浸透・定着させていきたいと考えています。
リリースしてからも丁寧に改善・フォローし、浸透させていくのが大事だと思います。これからが本当のスタートだと思うので、引き続きフォローさせていただきます。お時間をいただき、ありがとうございました。
画像:全国共済農業協同組合連合会様

(左から)全国本部 人事部 宮氏、大久保氏、志村氏、飯田氏、木村氏、大島氏

「タレントマネジメント」領域に関するケンブリッジの補足: 欧米では、スキルの保有数やジョブディスクリプションで仕事を明確に定義しているため、タレントマネジメントが比較的やりやすく、一般化しています。

一方、日本では、

・ジョブディスクリプションを作る慣習がない

・ジェネラリストとスペシャリストの能力を同時に求める雇用慣行がある

などの理由から、個々人の能力値の可視化に苦労している背景があります(特に、ジェネラリストの能力は定義しづらい)。

そのような事情がありながら、6000人以上の組織規模を誇るJA共済連様において、変革人材の定義を駆使し、職員に求める行動特性と業務のレベルを同時に測定し、人材レベルの可視化を行う取り組みは、日本ではあまり事例を見ない、先進的な取り組みだったと考えています。

このプロジェクトを成功に導いた
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