CASE
STUDYお客様事例
住友電装株式会社様
モノづくりの基幹システムを刷新、事業のグローバル拡大を目指す住友電装株式会社(以下、SWS)は、基幹業務を支えるハーネス設計システム「HARBEST(*1)」の構築にあたり、プロジェクト・マネジメントの支援をケンブリッジに依頼。 200名を超えるプロジェクトメンバーで開発された新システムは、当初計画どおりに本番稼働を迎えました。
#01住友電装株式会社
SWSは、グローバル・サプライヤーとして、自動車用ワイヤーハーネス(*2)およびその部品、オフィス機器用のワイヤーハーネス、各種ケーブルの製造を担っており、世界シェアの約4分の1を占めている。自動車メーカーのグローバル展開が加速される中、全世界を舞台にネットワークを拡大し、今や30ヶ国を超える拠点で、最適生産を実現している。
グループの基本理念である「Connect with the Best」には、“製品が担う接続の役割だけでなく、私たちを取り囲むあらゆる繋がりを、最良の方法でどこにも負けないものにする”という意味が込められている。
#02事業のグローバル拡大を目指して
SWSのハーネス設計システムは、ハーネス設計に必要なCAD機能だけでなく、お客様である自動車メーカーから受領した顧客図面を起点に、製造情報を加えた社内設計、原価計算、営業見積連携、BOM作成、組立作業指示にいたる、幅広い業務をカバーする”モノづくりの基幹システム”である。
SWSでは、多様化するお客様二-ズヘの対応、量産製造までのリードタイムのさらなる短縮、設計品質の向上、事業のグローバル拡大を実現するため、老朽化した旧システムを刷新し、全世界で柔軟に運用できる新システム「HARBEST」を構築、導入することになった
#03難易度の高いプロジェクト
旧システムの稼働開始は90年代であり、当時を経験したメンバーが殆ど残っていない状況で、プロジェクトは開始された。対象となるユ-ザー部門は、設計関連だけでも10部門を越え、グローバル拠点は豪亜、北米、南米、欧州に存在し、開発ベンダーは4社と、関係者は多岐に渡っていた。また、このような大規模なプロジェクトであるが、経営陣からは短期開での導入を期待されていた。このような背景から、プロジェクトの難航が予想されていた。
SWSは、過去の経験から、これほどの大規模なシステム刷新プロジェクトの成否の鍵は、プロジェクト・マネジメントにあると考えていた。自社内の数少ない経験者は、新しい業務のあり方の検討や要求定義に集中し、高度なプロジェクトマネジメントカは外部からのサポートを受けるべきである、と判断した。
そこで、プロジェクト全体を通してマネジメントできるノウハウを待ったケンブリッジがPMO(*3)として参画し、プロジェクト運営を支援することになった。
#04ファシリテーター型 PMO
ケンブリッジが中心となったPMOチームは、まずプロジェクト・マネジメントのプロセス改善に取り組んだ。
チームごとに個別に作成されていたスケジュールを統合し、プロジェクト全体の計画と進捗の見える化を推進することで、これまでは部分的な遅れが、全体の計画に波及することが多かったが、状況が可視化されることで素早い挽回策の実行が可能となり、進捗状況も改善されていった。
次に、着手したのは、上層部に対するコミュニケーションの改善であった。ステアリング会議の運営や、経営会議への報告資料作成、進捗フォローをケンブリッジが支援することにより、上層部に対するコミュニケーションがよりスムーズになった。
こうした貢献により、プロジェクトは経営層の理解と支持を取り付け、無事に経営会議で承認された。要求定義の完了後はプロジェクトの進行に合わせて、設計・開発工程のマネジメントを強化した。開発が本格化するに伴い、プロジェクトメンバーも増員されたが、有識者が少ないため、設計書のレビューがボトルネックとなるなど、遅延が懸念されていた。問題の発生を事前に回避するため、開発チーム別の朝会にケンブリッジのコンサルタントがファシリテーターとして参加し、日々の進捗状況や、課題を共有し、対策の検討を推し進めた。
また、システム導入の経験が少ないユーザー部門を支援し、システムの受入テスト計画策定・実施や、教育、利用現場への展開なども推進した。
ケンブリッジのPMOが特長的なのは、単に進捗管理、課題管理を担当するだけではなく、ファシリテーター型PMOとして積極的に課題解決に介入し、利害関係者が多い中で、スピーディーに論点を明確にし、お客様の視点でメリットやデメリットを整理の上、合意形成を推し進める点にある。
今回のプロジェクトでは、限られた予算、期間で、より効果の高いシステムを実現するため、フェーズごとにリリースする機能の意思決定プロセスにおいて、ケンブリッジのコンサルタントがファシリテーターを努め、利用部門、開発ベンダーなど、利害関係者が多い中、業務運用上の利便性、開発工数・期間、予算への影響などを踏まえたうえで、コンセンサスを可能にした。
このようにケンブリッジは、ユーザー側と開発側の両面を支援し、プロジェクト推進上のボトルネックとなり得るリスク・課題に対して適切な関係者を巻き込みながら対策を打つことで、プロジェクトの円滑な運営に貢献した。
#05One Teamと成長
プロジェクトを通じて、SWSのメンバーにも変化が見られるようになった。ファシリテーションの有用性を意識し、それを自ら取り入れようとし始めたことである。ケンブリッジがファシリテーションのトレーニングを提供したこともあったが、個々のメンバーの意識変革が大きい。システムの仕様変更を議論する変更管理審議は、ファシリテーター役をはじめ、SWSメンバーが中心で運営するようになった。
ケンブリッジの支援について、プロジェクトリーダーを務めた、設計システム企画部長の朝井勲氏は次のように語る。
「ワイヤーハーネスの製造設計という独特な業務領域ではあるが、業務理解に努め、SWS内の意思決定や、問題解決を推進してくれた。大規模なシステム導入プロジェクトでは、さまざまな課題が発生することは避けられないが、PMOとして課題の対応状況を管理するだけでなく、フットワークよく関係者に働き掛け、解決に向けてスピーディーに対応してもらうことができたと思う。また、外部のコンサルタントとして、第三者的な視点を保ちながらも、役割に線引きすることなく、プロジェクト成功のため、SWSの社員と同じ目線、目的意識で動いてくれた。」
#06プロジェクトの更なる展開
今後は、量産製造にかかわる業務や原価管理・営業関連業務のシステム開発を進め、国内要員の高付加価値業務へのシフトや、設計コストの削減を計画している。
対象となる業務領域が拡大し、関係者も増加することで、プロジェクトの難易度はさらに上がるが、これまでケンブリッジと共にプロジェクトを運営して培ったノウハウを活用し、計画どおりのリリースをめざす。
(*1)正式名称:「ハーネス ベスト エンジニアリング システム」
Harness Best Engineering System =「HARBEST(HBS)」
ロゴは、グローバルなコミュニケーションをイメージし、HBSの文字が織り込まれている。
(*2)ワイヤーハーネスの役割は、自動車やコピー機などの機器に搭載された電子部品や電装品を電気的に接続し、相互の情報と電力の伝送を中継することです。ワイヤーハーネスを構成する電線の 1本1 本は、電源をとるためのもの、センサーの信号を送るもの、操作情報を伝達するものなど、それぞれが違う役割を担っています。これを人間に例えると神経や血管に相当し、自動車や機器の動作の根幹を担う重要なパーツであると言えます。(SWS Webサイトより)
(*3)PMO:プロジェクトマネジメントオフィス
大規模なプロジェクトにおいて、管理業務の支援やプロジェクト間の調整などを行い、プロジェクトが円滑に実施されるよう支援することを目的に設置される組織体