SERVICEサービス

組織・業務変革サービスの具体的な進め方

画像:将来構想の策定
scroll

#04将来構想の策定

施策は「出し切ってから」絞る

ゴールやコンセプトの検討、それを裏付ける現状調査・分析。これらを実施している際、「こういう切り口で改革を進めよう」という想いや発言が参加者から多く挙がっているはずです。それらが業務改善を引き起こすための施策案です。ケンブリッジの支援するプロジェクトでは、それまでに出た案も含め、施策案をこのタイミングで全て「出し切り」ます。 なぜ「出し切る」のか。それは、後ろ髪を引かれないようにするため、後出しジャンケンを許さないためです。

施策の洗い出しが不十分だと必ず“物言い”が付きます。「電子化の施策は検討したのか?」「なぜ役割見直しの施策が入っていなんだ?」と。 一度“物言い”が付くと、もう一度施策を検討し直さないと前に進めなくなります。「本当はこっちの施策の方がいいのに・・・」と誰かが思っている状態では上手くいくはずがありません。施策実行フェーズでの協力を得られないこともあります。 ケンブリッジの考える「プロジェクトの進め方」は、「いったん取りうる限りの選択肢を出し切って、その中から参加者全員が納得できる方法で選択肢を絞り込む」です。この考え方がヴァージェンスモデルです。

図表18 発散収束モデルの図

出し切るまでは絞り込んではならない。絞り込むときは誰もが納得行く形で、という考えです。

業務改善の王道施策

ケンブリッジが施策案を出し切るときに大切にしている考え方をいくつかご紹介します。ひとつひとつは聞けば「それはそうだ」と思われる方も多いですが、常にこれらを念頭に置き、かつ組み合わせながら施策案を議論するのは難しいものです。

1. 業務の標準化
取引先との契約パターンやシステムへの登録タイミング、残業手当の支払方法など、事業所や部署、場合によっては合併した会社間、など、様々な階層、理由でバラバラになっている業務やシステムをひとつに揃えることを指します。調べてみると、古くからの習慣・名残り、前任担当者のやり方を引き継いだだけ、など「そんな理由だったのか」と驚くケースが少なくありません。

標準化は、すべての改革施策の出発点です。統合、アウトソースなど大胆で効果の高い施策を実行しようとしても対象の業務がバラバラでは、困難になったり、現状よりコストがかかったり、といった事態になりかねません。ただし、何でもかんでも標準化すると強みが失われてしまうケースもあります。自社の強みを見極め、標準化の範囲を見定めるのが重要となります。



2. 業務の集約とアウトソース
いずれも業務改善施策としてはよく取り上げられる考え方です。しかし、どのような業務が集約できて、どれがアウトソースできるか、参加者全員が納得できる議論はできているでしょうか。 ケンブリッジではこういう場合、関係者を集め、4象限のマトリクスで業務をマッピングしながら議論します。

図表19 集約業務判断のマトリクス

例えば、「経費申請と領収書を突合する」という業務は「定型+どこでも可能」ですから、アウトソース化の議論が可能です。 「各地の工場で経費処理する」という業務がある場合、「定型+特定の場所のみ」から「定型+どこでも可能」へ集約できないか検討します。「工場によって経費扱いにするかどうかの基準が違う」などルールや手順が標準化されていなければ、それを標準化できるか議論してから、さらに集約化を検討します。

図表20 (事例)業務集約マトリクス 分類結果

3. 改革のテコとECRSで課題をつぶし切れ
調査・分析によって見えてきたたくさんの課題。これらを解決する、というアプローチでも施策を検討できます。 しかし、ただ漫然と課題を見ていても施策をひらめきません。こういうときは、「改革のテコ」と「ECRSの原則」を組み合わせて、課題に当てはめてみます。

図表21 改革のテコとECRSの原則

例えば、「承認アイテムが多すぎ、内容を見ずに承認をしている。後でトラブルになることもある」という課題に対して、「承認プロセス×なくせないか(Eliminate)」という観点で承認アイテムを棚卸します。「出産申請」など、本来は連絡でよい内容があるならば「連絡程度の申請はなくす」という施策案を発案します。 他にも、「紙ベースで申請承認をしており、承認者の帰社時間が短く対応しきれない」という課題があれば「情報システム×簡素化(Simplify)」という観点で、出先でも承認行為を行えるWEBベースのワークフローシステムの導入施策案が考えられるでしょう。こういったひとつひとつの検討の地道な積み上げが、「施策を出し切る」ことにつながります。

4. 最後に「出し切った感」を一覧化
関係者全員が、「これは確かに出し切った」と言える状態を作るために、課題と施策のマトリクスを作ります。

図表22 (事例)施策・課題マトリクス

すべての課題に対応する施策がひもづいていることを一目で確認できます。また、解決する課題の数の多寡により、施策の優先順位づけを議論できるのもこのマトリクスの特徴です。

星の数ほどの施策をどう絞る?

施策を出し切ったら、ここからは絞り込みの作業に入ります。挙がった全ての施策を一気にやりきる事はできません。人、時間、コスト、という制約条件があるからです。したがって、効果の高い施策に絞ってまずは実行すべきなのです。 また、優先順位の低い施策は切り捨てるのではなく、実行の時期を遅らせることで効率的に効果を刈り取ることが可能となります。ここで作られる施策一覧は、そのまま企業の中期経営計画そのものとなるケースもあります。 ケンブリッジが支援した実プロジェクトの施策一覧です。

図表23 (事例)施策一覧

一覧の右側に「優先度」、つまり絞り込みの着眼点があります。ケンブリッジでは、3つの切り口で各施策の優先度を測ります。優先度はHigh(優先すべき)~Medium~Low(優先順位を下げるべき)の3段階で評価します。評価ルールはプロジェクトごとに関係者で議論して決めていきます。

1. ビジネス・ベネフィット
プロジェクトゴールへの貢献度です。効率化がゴールのプロジェクトなら、10人分効率化できるほうが1人分効率化できる施策よりビジネス・ベネフィットが高いといえるでしょう。

誰もが見ても理解できる明快な採点ルールが必要です。例えばコスト削減を目指したプロジェクトなら、
High:20人月以上の削減が見込める施策
Medium:10人月程度の削減が見込める施策
Low:上記に当てはまらない施策
 
といったルールを作ります。

2. 組織受入態勢
施策を実行したときに、組織としての変化がどの程度必要かを示す指標です。現在の組織のまま実行できるのか、それとも、教育や労使交渉などが必要で実行するにはハードルが高いのか。例えば、以下のように採点ルールを決めます。
High:部内の周知・教育だけで済む施策
Medium:他部署や全社員に教育や協力依頼が必要な施策
Low:取引先などの社外に、協力を要請する必要がある施策

3. コスト
施策実現に必要な投資額に関する指標です。例えば、システムリニューアルが前提の業務改善プロジェクトの場合、
High:システム改修が不要な施策 ※コストがかからないものがHighです
Medium:5人月未満のシステム改修が必要な施策
Low:5人月以上のシステム改修が必要な施策

いったん全施策に対して上記の3つの切り口で採点をします。もし、大半の施策がH/H/Hになってしまうのであれば、採点ルールを見直します。 3つの採点結果の組合せが「すぐ着手するには微妙(H/L/M、M/H/Mなど)」といった施策は、いつ実行するか(今やるか、先送るか、先送るならいつか)を関係者で議論し、合意形成します。

実行可能な施策へ昇華させる

実行対象の施策案が決まったら、具体的にどのように実行するのか、を練り上げていきます。 施策の練り上げもケンブリッジ流の「ヴァージェンスモデル(発散収束モデル)」モデルで実施します。 まず、施策の具体化へ向けた論点(施策を適用する作業の範囲は? 部署は?など)を明確にします。そして、その論点の優先順位に従い、具体化の選択肢を洗い出して、調査・分析で明らかになった情報をもとに、実行すべき具体案を絞り込んでいきます。

具体的な事例を元に解説していきましょう。 「営業業務改善プロジェクト」における「営業事務業務の集約化」施策の練り上げステップをご紹介します。各ステップでどのように議論を発散させ収束させたのか、という観点でご覧ください。

◆ 集約対象業務を広げて絞る
この時点で決まっていたのは業務を集約する、ということだけです。どのように集約するか、何を集約するかなど一切決まっていない状況でした。最初に議論したのは「どの業務を集約するのか?」という論点です。

図表24 (事例)集約対象業務の検討

① 発散:集約対象となり得る業務を洗い出し、パターン化
② 収束準備:それぞれのメリット・デメリットを整理
③ 収束:横並びで比較し、ベストな案を選択。この時は「部分的に切り出しても効果が薄い」という結論で、C案を選択
これで「どの業務を集約するか?」の合意が取れました。

◆ 集約対象案件を広げて絞る
次は集約の対象とする「案件」です。業務の集約対象は決まりましたが、全ての案件を集約するのか、標準的な簡単な案件だけを集約対象とするのか、を議論しました。

図表25 (事例)集約対象案件の検討

① 発散:集約業務を適用する案件を議論するために、「初回契約か、2回目以降の更新か」「契約条件の見直しが必要か」の2軸・4枠の選択肢を作成
② 収束準備:各パターンの案件数をプロットし、ボリューム比較
③ 収束:2回目以降の更新かつ見直し不要、かつボリューム最大のB枠を集約対象とし、他枠は集約しないことを合意形成

これらはほんの一例に過ぎませんが、このように施策を練り上げる際には、ヴァージェンスモデル(発散収束モデル)の考え方が欠かせないことがお分かりいただけると思います。この考え方が念頭にあるかないかで議論の質が激変します。中途半端な議論は、むしろ混乱と手戻りを呼び、施策を殺してしまうでしょう。 施策の練り上げは大変難度の高いステップです。検討すべき論点の順番や必要十分な情報の確保、議論に必要な担当者の巻き込み、議論が行き詰った時のクイックな切り戻しなど、様々な要素を踏まえながら進める必要があります。