ファシリテーション・エンジン

ケンブリッジのコンサルティングスタイルは、ファシリテーション型コンサルティングです。我々の経験を基に、プロジェクトをファシリテートするにあたり、プロジェクトメンバーが考慮すべき点を「ファシリテーション・エンジン」としてまとめました。

ファシリテーション・エンジン


目的に向かっているか問い続ける

プロジェクトはルーティンワークとは異なり、初めての作業ばかりです。発生するたくさんのタスクをMUST、WILL、CANに分けたとき、目的の達成にはMUSTのタスクをしないといけないのに、とりあえずできる/やりやすいCANばかりやっていることはありませんか。また、目先のタスクや課題にばかり注力し、他のタスクがおざなりになりスケジュールが遅延した、ということもありがちです。
これらを防ぐために、「近視眼的になっていないか?」、「手段がゴールになっていないか?」 、「このタイミングでこの作業に時間をかけることは、ゴール達成に必要なことか?」などと、各メンバーが、そしてチーム全体で確認しながら進める事が大切です。

銀の弾丸はない

「狼男を倒す必殺の銀の弾丸(特効薬)のような、全ての問題に通用する万能な解決策などは存在しない」と古典的名著「人月の神話」に書かれています。残念ながら数十年経った今も、それに変わりありません。
ゴールへの道が、たとえどんなに地道な作業の連続であっても、面倒だから、大変だからといって、それを回避する銀の弾丸を探すことより、地道ながらも着実にそしてスピーディに行う方が、ゴールへの近道になることが多いのです。

全能のリーダーはいない

「うちのリーダーはダメだ」「あのリーダーのせいで失敗したんだ」という愚痴を聞くことがあります。また、プロジェクト成功率を高めるためにはリーダーの育成こそが唯一の鍵だ、という方針を打ち出している会社もあります。確かに万能なリーダーがいればプロジェクトは成功するかもしれません。しかし、万能なリーダーという青い鳥を探すことにプロジェクトの成否を賭けるのはナンセンスです。
むしろ、以下の考えをベースに、メンバー個々の力を引き出し、チーム全体の力を向上させることで、プロジェクトを成功に導くことができます。
・メンバーの誰もがリーダーシップを発揮する
・リスク管理とのバランスを考慮しメンバーへ権限委譲する
・メンバーも積極的にプロジェクトをマネジメントする

参加意欲は育むもの

予想外のことが次々と起こり、指示を待たずに自主性を発揮することが必要な状況では、「このプロジェクトで働いてください」という辞令や契約では不十分であり、各メンバーが「このプロジェクトで仕事をしたい」と思うことが大切です。
そのためには、各メンバーが「意味のある仕事に関与している」、「濃い会議で良い意思決定ができた」、「このプロジェクトでは成長できる」といった思いを実感できる仕掛けを意図的に作るなど、参加意欲を高める工夫が必要です。時にはちょっと目先を変えたセッションを開いたり、チームの部屋を居心地よくしたりすることも効果的でしょう。「参加意欲」の重要性を理解し、育む努力が必要なのです。

グラウンドルールで強いチームを作る

グラウンドルールとは、関係者が気持ちよく仕事を行うための、プロジェクトにおける行動規範のことです。生まれも育ちも違うメンバーが集まり、プロジェクトを円滑に進めるためには、日々どう活動するかというレベルでも意識あわせをしておきたいものです。
そのために、我々はプロジェクト開始時にメンバー全員でグラウンドルールを検討し、プロジェクト・ルームの目に付く位置に張り出しておくことで、常に意識できるようにしています。

守備範囲を広く持とう

チームで仕事をする際、「自分の役割やチームの担当範囲はここまで」と線引きをし、余計なことには首を突っ込まないでおこう、という傾向に陥りがちです。そのような状況では、各自が役割をしっかり果たしても、空白地帯の検討が漏れていてプロジェクトが失敗することがあるのです。
プロジェクトに点在する狭間の作業や課題に常にアンテナを張り、関連するチームに働きかけ、時には自ら解決をリードしていきましょう。役割分担は重要ですが、全ての作業が事前に把握できているとは限りません。役割の範囲を超えた曖昧なタスクが発生していないか常に気を配り、メンバー全員で柔軟に対応する心掛けが成功につながるのです。

誰でも鐘を鳴らしてよい

プロジェクトが混乱に陥り収拾の目処が立たない状態を火事に例えることがあります。本当の火事もプロジェクトの火事も、燃え広がる前に早く消火して被害を最小限におさえることが大切です。
火事に気づいた人がすぐに「火事だー!カンカンカン!」と鐘を鳴らして皆に知らせてくれればいいのですが、火元責任者は「責任を問われる前に自分で何とかしたい」、周りの人は「他人のやることに口出すのは良くない」という意識が働いてなかなかできないようです。だから、このような意識の壁を壊し、誰でも鐘を鳴らせる環境を作ることが大切です。

軌道修正はこまめに行う

3年間全力を尽くしたプロジェクトの終了報告の場で、プロジェクトオーナーより「想定していたものと違う」との言葉。これは悲劇です。ゴール目前での「ちゃぶ台返し」には見舞われたくないものです。
そのためには定期的なチェックポイントの開催が有効です。プロジェクトオーナーを含めた利害関係者とプロジェクトの方向性がずれていないことを確認する場を予め設けておくことで、「想定外」が発生するリスクを最小化することができます。日々の軌道修正が円滑なプロジェクト遂行の秘訣なのです。

やっつけたいのは「彼ら」ではなく「問題」

プロジェクトで発生した問題の原因を誰かのせいにしても何の解決にもなりません。闘うべき相手は人ではなく問題です。
解決すべき問題をフリップチャートやホワイトボードなどに書き出し、メンバー全員がそれに向かって並んで座る。例えばこのような工夫により、協力して問題を解決しようという意識が生まれます。

困ったチャンはいない

プロジェクトワークや会議の最中に、「あぁ、この人は困った人だな」と思ったことはありませんか?そんな時はよく考えてください。実はあなたがその人に「困ったチャン」というレッテルを貼っているだけなのかもしれません。
異なる役割、異なる前提知識、異なる経験の持ち主が集まって1つの事を成し遂げようとする時に必要なのは、「どういう意図でこういう態度をとっているのかな?」「どういう情報を共有すれば、共に解決策を考えられるようになるのだろうか?」とその人の立場を察することなのです。

ブラックボックスは早めに開けろ

ブラックボックスを開けるのを後回しにしても、何もいいことはありません。課題解決のためのコストと時間が余計にかかるだけです。時にはプロジェクトゴールを揺るがす事態になりかねません。
ブラックボックスを見つけたら、迷わず開けましょう。
それが多少時間を要することであっても、プロジェクトゴールを達成するためには、避けては通れない道なのです。そして、見えなかった部分を明らかにしてから、その先の「打ち手」を考えましょう。

課題発見はゴールへの一歩

課題の無いプロジェクトはありません。メンバーに「何の課題もありません」と言われたら、むしろ怪しむべきです。
課題には、プロジェクトを進める上で解決すべきことが既に明確になっているものも、突然現れてプロジェクトの進行を妨げるものもあります。ただ、どのような課題も忌み嫌う必要はありません。なぜならば、課題の発見により、プロジェクトを失敗させる要因やリスクへの対応策を考えることができるからです。それはプロジェクトを遂行する上で幸せなことです。